「法令」が苦手な人の覚え方
9問取るための順番
法令は暗記量が多く、参考書を開いた順に覚えようとすると途中で息切れします。ここではどこから手を付けるかを4段階に分けて示します。数値はすべて e-Gov 法令検索の条文本文で確認し、条番号を添えました。
最終確認:2026年8月18日 根拠:消防法・危険物の規制に関する政令・危険物の規制に関する規則 ほか
目次から選ぶ8の項目から読みたいところへ
まず「9問」の意味を知る
乙種の試験は3科目35問です。合格には科目ごとにそれぞれ60%以上が必要で、1科目でも下回ると、ほかが満点でも不合格になります。
| 科目 | 問題数 | 必要な正解数 | 落とせる数 |
|---|---|---|---|
| 危険物に関する法令 | 15問 | 9問 | 6問 |
| 基礎的な物理学及び基礎的な化学 | 10問 | 6問 | 4問 |
| 危険物の性質並びにその火災予防及び消火の方法 | 10問 | 6問 | 4問 |
割合はどの科目も同じ6割ですが、法令だけは9問という絶対数が重いのが実感としての難しさです。逆にいえば、法令は条文に書いてあることがそのまま出るので、手を付ける順番さえ間違えなければ積み上がる科目でもあります。
時間配分や受験料など試験全体の話は乙4の試験概要にまとめています。
手を付ける順番(4段階)
法令を「頭から順に」覚えようとすると、いきなり製造所の構造基準のような細かい話に入ってしまい、挫折しやすくなります。次の順番をおすすめします。
- 指定数量 …… ほかのほぼ全部の土台になります。倍数が分からないと、保有空地も定期点検も判断できません
- 製造所等の12区分 …… 「屋内貯蔵所」「移動タンク貯蔵所」といった名前が読めないと、問題文の意味が取れません
- 数値がからむ論点 …… 保安距離・保有空地、そして定期点検。ここで初めて数字を覚えます
- 紛らわしい言葉のペア …… 運搬と移送、許可と承認と認可。最後に差がつくところです
1と2は意味が分かれば覚えられるもので、3と4は比べないと覚えられないものです。性質が違うので、混ぜて勉強しないほうが進みます。
① 指定数量は8つの数字の並びで覚える
第4類の指定数量は、政令 別表第三に定められています。覚える数字は実質8つだけです。
50 / 200 / 400 / 1,000 / 2,000 / 4,000 / 6,000 / 10,000(単位はリットル)
この並びには規則性があります。丸暗記の前にここを押さえてください。
- 危険なものほど数量が小さい …… 引火点が低い区分ほど、少ない量から規制されます。特殊引火物50L → 第一石油類200L → 第二石油類1,000L の順に増えます
- 水溶性は非水溶性の2倍 …… 200↔400、1,000↔2,000、2,000↔4,000 がすべてこの関係です
- アルコール類だけ例外 …… 水溶性・非水溶性の区別がなく400Lで固定です
倍数の計算でつまずくところ
倍数は「貯蔵量 ÷ その品名の指定数量」で出し、複数あるときは足し合わせます(消防法 第10条第2項)。落としやすいのは、1つずつは指定数量に届いていないのに、合計すると規制対象になる型です。
| 危険物 | 貯蔵量 | 指定数量 | 倍数 |
|---|---|---|---|
| ガソリン(第一石油類・非水溶性) | 100L | 200L | 0.5 |
| 軽油(第二石油類・非水溶性) | 500L | 1,000L | 0.5 |
| 重油(第三石油類・非水溶性) | 1,000L | 2,000L | 0.5 |
| 合計 | 1.5倍 | ||
3つとも単独では指定数量未満ですが、合計が1以上なのでこの場所は規制の対象になります。「どれも指定数量に達していないから対象外」と読ませる選択肢が用意されるところです。
品名ごとの一覧と計算のパターンは第4類の指定数量一覧と倍数の計算、引火点による区分の分かれ方は危険物 第4類とはにまとめています。
② 製造所等は「1・7・4」で覚える
問題文に出てくる施設の名前が読めないと、知識があっても解けません。製造所等は全部で12種類あり、内訳は製造所1・貯蔵所7・取扱所4です。
| 区分 | 数 | 中身 |
|---|---|---|
| 製造所 | 1 | 製造所 |
| 貯蔵所(政令 第2条) | 7 | 屋内貯蔵所/屋外貯蔵所/屋内タンク貯蔵所/屋外タンク貯蔵所/地下タンク貯蔵所/簡易タンク貯蔵所/移動タンク貯蔵所 |
| 取扱所(政令 第3条) | 4 | 給油取扱所/販売取扱所/移送取扱所/一般取扱所 |
貯蔵所7つは「タンクではない2つ(屋内貯蔵所・屋外貯蔵所)」+「タンクの5つ(屋内・屋外・地下・簡易・移動)」と分けると、数え落としがなくなります。
取扱所で数値が問われるのは販売取扱所です。政令 第3条は、指定数量の倍数が15以下を第一種販売取扱所、15を超え40以下を第二種販売取扱所と定めています。ここでも倍数が土台になっているのが分かります。
なお「移送取扱所」は配管とポンプで危険物を送る施設のことで、タンクローリーのことではありません。名前が似ているので後述の「移送」と混同しないでください。
図解で確認:製造所等は「許可 → 工事 → 完成検査 → 使用開始」
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図解の参考:消防法第11条第5項(図解追加:2026年9月10日)
図解で確認:屋外貯蔵所に置けるのは「引火点が高めの燃える物」だけ
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図解の参考:危険物の規制に関する政令第2条第7号(図解追加:2026年9月10日)
③-1 保安距離と保有空地は別物として覚える
この2つは名前が似ていて、しかも同じ政令 第9条に並んでいるため、入れ替えて出題されます。守る対象が違うと考えると整理できます。
| 保安距離 | 保有空地 | |
|---|---|---|
| 何のため | 周りの建物を守るための距離 | 消火活動のために空けておく帯 |
| どこからどこまで | 製造所の外壁から、学校や住居などの相手側まで | 危険物を扱う建物の周囲 |
| 決まり方 | 相手が何かで決まる | 指定数量の倍数で決まる |
| 条文 | 政令 第9条第1号 | 政令 第9条第2号 |
保安距離(製造所の場合)
| 相手 | 距離 |
|---|---|
| 住居(同一敷地内のものを除く) | 10m以上 |
| 学校、病院、劇場その他多数の人を収容する施設 | 30m以上 |
| 重要文化財、史跡等に指定された建造物 | 50m以上 |
| 使用電圧 7,000Vを超え35,000V以下の特別高圧架空電線 | 水平距離3m以上 |
| 使用電圧 35,000Vを超える特別高圧架空電線 | 水平距離5m以上 |
いちばん遠いのが重要文化財の50mと決めておくと、残りが整理しやすくなります。電線の2つは「電圧が上がれば距離も伸びる」だけなので、数字を丸暗記する必要はありません。
保有空地(製造所の場合)
| 指定数量の倍数 | 空地の幅 |
|---|---|
| 10以下 | 3m以上 |
| 10を超える | 5m以上 |
覚える数字は10・3・5の3つだけです。相手が出てきたら保安距離、倍数が出てきたら保有空地——問題文のどこを見るかを先に決めておくと、迷わなくなります。
③-2 定期点検は「地下」と「移動」から思い出す
定期点検は、すべての製造所等に義務があるわけではありません。政令 第8条の5が対象を指定しており、そこに並んでいる5つには共通点があります。
- 危険物を取り扱う地下タンクを有する製造所
- 地下タンク貯蔵所
- 移動タンク貯蔵所
- 地下タンクを有する給油取扱所
- 地下タンクを有する一般取扱所
「地下」と「移動」。どちらも外から見て漏れが分からない施設です。だから定期的に点検させる、と理解しておくと選択肢を絞れます。(このほか、指定数量の倍数が大きい製造所・屋内貯蔵所・屋外タンク貯蔵所など、政令 第7条の3が挙げる施設も対象です)
回数と記録の保存期間は次のとおりです。
| 項目 | 内容 | 条文 |
|---|---|---|
| 点検の頻度 | 1年に1回以上 | 規則 第62条の4 |
| 点検記録の保存(原則) | 3年間 | 規則 第62条の8第5号 |
| 移動貯蔵タンクの漏れの点検の記録 | 10年間 | 規則 第62条の8第4号 |
点検を行えるのは危険物取扱者または危険物施設保安員で、危険物取扱者の立会いがあれば、それ以外の人も点検できます。
図解で確認:定期点検:年1回以上・誰が・記録は何年
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図解の参考:消防法第14条の3の2(図解追加:2026年9月10日)
図解で確認:予防規程と定期点検の対象は「倍数」で覚える
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図解の参考:危険物の規制に関する規則第61条(図解追加:2026年9月10日)
④ 紛らわしい言葉のペアで最後の差がつく
ここまで来たら、残りは「言葉の違い」です。似た言葉を並べて比べるのがいちばん早く覚わります。
運搬と移送
| 運搬 | 移送 | |
|---|---|---|
| 何をすること | 容器に入れて車両で運ぶ | 移動タンク貯蔵所(タンクローリー)で運ぶ |
| 条文 | 消防法 第16条 | 消防法 第16条の2 |
| 危険物取扱者 | 乗車を求める規定はありません | その危険物を扱える危険物取扱者を乗車させることが条文に明記されています |
| 免状 | — | 乗車しているときは免状を携帯(同条第3項) |
条文を並べると違いがはっきりします。第16条は容器・積載方法・運搬方法の基準を守れとしか書いていませんが、第16条の2は「危険物取扱者を乗車させてこれをしなければならない」と人を名指ししています。
許可・承認・認可・届出
「誰に」出すかは法令15問の攻略(出るところまとめ)にまとめてあります。ここではどの言葉が使われるかだけを押さえてください。
| 言葉 | 何のときか | 条文 |
|---|---|---|
| 許可 | 製造所等の設置・変更 | 消防法 第11条第1項 |
| 承認 | 仮貯蔵・仮取扱い(10日以内)/仮使用 | 第10条第1項ただし書/第11条第5項ただし書 |
| 認可 | 予防規程を定めるとき・変更するとき | 消防法 第14条の2第1項 |
| 届出 | 品名・数量の変更、用途の廃止、譲渡・引渡し など | 第11条の4 ほか |
「認可」が出てくるのは予防規程だけ。この1点を覚えておくと、選択肢の消し込みが一気に楽になります。免状まわりの手続きは免状の書換え・再交付と保安講習で扱っています。
図解で確認:許可の取消しは「施設の違反」、使用停止だけは「人の違反」
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図解の参考:消防法第12条の2(図解追加:2026年9月10日)
覚えたつもりを、問題で確かめる
法令でいちばんもったいないのは、表を眺めて覚えた気になったまま本番を迎えることです。この科目は数字の入れ替えや、似た言葉のすり替えで問われます。読んで分かることと、選択肢の中から選べることは別物です。
この記事で扱った論点は、合格ドリルの危険物取扱者 乙4「法令」のドリル(73問)で確認できます。1問ずつ答えるとその場で正誤と解説が出るので、どの数字を取り違えていたのかがその場で分かります。
おすすめの使い方は、上の4段階を1つ終えるごとに解くことです。指定数量を覚えたら解く、12区分を覚えたら解く——という進め方だと、あやふやなまま次に進むのを防げます。ほかの科目も含めた全体は危険物取扱者 乙4のドリルにまとめてあります。
編集:合格ドリル運営者|作成と検証の手順は運営者情報に、 誤りを見つけた場合の訂正は訂正履歴で公開しています。
科目ごとに問題を解く
次にやること
危険物取扱者 乙種第4類のページに、ほかの解説記事もまとめています。