「性質・火災予防・消火」10問の攻略
【引火点の覚え方と消火方法】
この科目は10問しか出ませんが、6問取れないとその時点で不合格です。しかも聞かれるのは物質ごとの数値。ここでは「どの数値を、どう比べて覚えるか」に絞って整理します。数値は厚生労働省のモデルSDS、消火は政令の条文で確認したものだけを載せています。
最終確認:2026年8月18日 根拠:消防法 別表第一・危険物の規制に関する政令 別表第三・別表第五・消防法施行規則 第34条の3 ほか
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この科目で問われるのは3つだけ
「危険物の性質並びにその火災予防及び消火の方法」は10問出ます。合格には科目ごとに60%以上が必要なので、6問取らなければ他が満点でも不合格です(配点と時間配分の考え方は勉強時間はどれくらい?配点から考えるにまとめています)。
ただ、範囲そのものは狭いです。10問で問われるのは、実質この3つに集約されます。
- 第4類に共通する性質……水に浮くか、蒸気は空気より重いか、電気を通すか
- 代表的な物質の数値……引火点・発火点・比重・燃焼範囲。ガソリンと灯油を入れ替えた選択肢が定番です
- 火災予防と消火……なぜ棒状の水を使わないのか、どの消火剤が適応するのか
この記事では、1と2を「比べて覚える」形にしてから、3を条文で確認します。
覚える順番は 引火点 → 比重 → 燃焼範囲
物質ごとに10個の性質を覚えようとすると挫折します。問われる順に、次の3つだけを先に固めてください。
- 引火点……その液体が何度になると、火を近づけたときに燃える蒸気を出すか。第4類の区分を理解するための重要な温度です
- 比重……水に浮くか沈むか。消火のときに水をかけていいかどうかが、ここで決まります
- 燃焼範囲……蒸気が空気に何%混ざったときに燃えるか。下限が低いものほど、少し漏れただけで危険です
発火点(火を近づけなくても、その温度になると自分から燃え出す温度)は4番目でかまいません。ただし「同じ物質なら発火点は引火点よりずっと高い」という関係だけは先に押さえてください。2つを入れ替えた選択肢が定番です。
図解で確認:引火点と発火点の違い
数値を覚える前に、引火点は「火を近づけると引火する最低の液温」、発火点は「点火源なしで自ら発火する最低の温度」という違いを図で固めておくと、数値一覧がすっと入ります。
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図解の参考:消防庁「消防法に基づく方法による引火点、発火点テスト」(図解追加:2026年9月10日)
主要な物質の数値一覧(モデルSDSの値)
下の数値は、厚生労働省「職場のあんぜんサイト」のGHSモデルSDSに記載されている値です。ガソリンや灯油は混合物なので幅があり、資料によって数値が違います。だからこそ、丸暗記ではなく後ろに書いた「比べ方」で覚えてください。
| 物質 | 区分 | 引火点 | 発火点 | 比重 | 燃焼範囲 | 水に |
|---|---|---|---|---|---|---|
| ジエチルエーテル | 特殊引火物 | −45℃ | 175℃ | 0.71 | 1.7〜48vol% | 少し溶ける |
| 二硫化炭素 | 特殊引火物 | −30℃ | 90℃ | 1.26 | 0.6〜60vol% | ほぼ溶けない |
| ガソリン | 第一石油類 | −45℃ | 約300℃ | 0.72〜0.76 | 1.3〜6.0vol% | 溶けない |
| アセトン | 第一石油類(水溶性) | −20℃ | 465℃ | 0.788 | 2.2〜13vol% | よく溶ける |
| ベンゼン | 第一石油類 | −11℃ | 498〜562℃ | 0.879 | 1.2〜8.6vol% | ほぼ溶けない |
| トルエン | 第一石油類 | 4.4℃ | 480℃ | 0.866 | 1.27〜7vol% | ほぼ溶けない |
| メタノール | アルコール類 | 12℃ | 464℃ | 0.79 | 6.0〜36.5vol% | 混ざる |
| エタノール | アルコール類 | 13℃ | 363℃ | 0.789 | 3.3〜19vol% | 混ざる |
| 灯油 | 第二石油類 | 37〜65℃など(下記注記) | 220〜254℃ | 0.8 | 0.7〜5vol% | 溶けない |
| 軽油 | 第二石油類 | 21〜55℃ | 177〜329℃ | 0.84 | 0.7〜5vol% | ほぼ溶けない |
| 重油 | 第三石油類 | 条文上は引火点70℃以上200℃未満。水より軽く、水に溶けません | 溶けない | |||
この表から読み取れることは3つです。
- 引火点がマイナスのものは、真冬でも燃える蒸気を出している。ジエチルエーテル・二硫化炭素・ガソリン・アセトン・ベンゼンがそうです
- 比重は二硫化炭素だけが1を超えている。あとは全部1未満、つまり水に浮きます
- 発火点は引火点と連動しない。二硫化炭素は引火点が−30℃で発火点も90℃と極端に低い一方、ガソリンは引火点−45℃なのに発火点は約300℃です
- 燃焼範囲は下限を見る。二硫化炭素0.6vol%、灯油・軽油0.7vol%のように下限が1%を切るものは、ごく薄い蒸気でも燃えます。特殊引火物は上限も桁違いに高く(二硫化炭素60vol%、ジエチルエーテル48vol%)、燃える濃度の幅そのものが広いのが特徴です
軽油の値は、モデルSDSに「ディーゼル燃料油No.1」として記載されているものです。ガソリン・灯油・軽油・重油はいずれも単一の化合物ではないため、参考書によって数値が違うことがあります。比較して理解することは役立ちますが、数値そのものを判断する問題もあるため、法令の基準値と資料に載る物性値を区別してください。
灯油の「40℃以上」と、モデルSDSの「37〜65℃」は、同じ条件の数値ではありません。国内で販売する灯油の品質規格は、揮発油等の品質の確保等に関する法律施行規則第27条で引火点40℃以上とされています。一方、上表は一般的な灯油の参考物性で、モデルSDSには37〜65℃のほか65〜85℃という文献値も載っています。
さらに、消防法の第二石油類の分類基準は引火点21℃以上70℃未満であり、灯油の品質規格とは別です。分類を問われたら法令の区分、品質を問われたら規格値、特定の製品を扱うときはその製品のSDSを確認します。これらの数値を入れ替えて使わないでください。
ガソリンと灯油は、必ずセットで比べる
ここでは、ガソリンと灯油の性質を混同しないように整理します。片方だけを覚えるのではなく、必ず並べて比べてください。
| ガソリン | 灯油・軽油 | |
|---|---|---|
| 区分 | 第一石油類 | 第二石油類 |
| 消防法の石油類の分類基準(一気圧) | 21℃未満 | 21℃以上70℃未満 |
| 常温(20℃)で | 引火する | そのままでは引火しにくい |
| 比重(モデルSDS) | 0.72〜0.76 | 0.8/0.84 |
| 着色 | オレンジ系に着色 | ほぼ無色〜淡黄色 |
この比較で使う分類の境目は21℃と70℃です。第一石油類は21℃未満、第二石油類は21℃以上70℃未満。ただし、第4類には特殊引火物やアルコール類など別の定義もあるため、すべての物質を引火点だけで石油類に分類することはできません。
ただし「引火点が高い=安全」ではありません。灯油や軽油も、霧状にしたり布にしみ込ませたりすると表面積が増え、引火点より低い温度で引火します。この点を突く問題がよく出ます。
区分ごとの定義と指定数量そのものは危険物 第4類とは|区分と指定数量と指定数量一覧と倍数の計算にまとめています。
図解で確認:灯油・軽油は「霧状にすると」引火点より低くても燃える
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図解の参考:消防試験研究センター「過去に出題された問題」丙種 問21(図解追加:2026年9月10日)
比重と蒸気比重は「1」を境に見る
第4類には、数値を全部覚えなくても解ける共通の性質があります。基準はどちらも「1」です。
| 基準 | 第4類は | 結果 | |
|---|---|---|---|
| 比重(水=1) | 水の重さ | ほとんどが1未満 | 水に浮く |
| 蒸気比重(空気=1) | 空気の重さ | ほとんどが1超 | 低いところにたまる |
モデルSDSの蒸気比重(空気=1)を並べると、メタノール1.11、エタノール1.59、ジエチルエーテル2.55、二硫化炭素2.67、トルエン3.1、ガソリン3〜4と、すべて1を超えています。「第4類の蒸気は空気より重い」は、覚え方ではなく実際の数値がそうなっている、ということです。
だから換気は低い位置で行います。ピット・地下室・床のくぼみに蒸気がたまり、そこから離れた場所の火気まで届いて引火する——これが第4類の典型的な事故の形です。
図解で確認:蒸気比重が1より大きい蒸気は"下"にたまる
文章より、部屋の断面で見ると一発です。容器から出た蒸気は空気より重いので床に沿って流れ、排水溝・地下ピット・くぼみにたまります。換気口が低い位置にある理由もここにあります。
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室内の断面を例にした模式図です。蒸気比重は空気を1としたときの重さの比です。
図解の参考:消防試験研究センター「過去に出題された問題」丙種 問21(図解追加:2026年9月10日)
比重が1を超える例外は二硫化炭素(1.26)です。水より重く水に溶けないので、水を張って蒸気の発生を抑える貯蔵方法がとられます。例外はここだけと覚えて問題ありません。
図解で確認:比重が1より小さい液体は水に浮く
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図解の参考:消防試験研究センター「過去に出題された問題」丙種 問19(図解追加:2026年9月10日)
水溶性か非水溶性かで、2つのことが変わる
「水に溶けるかどうか」は、性格の説明ではなく法令上の区分です。危険物の規制に関する政令 別表第三 備考第10号は、水溶性液体をこう定義しています。
一気圧において、温度二〇度で同容量の純水と緩やかにかき混ぜた場合に、流動がおさまつた後も当該混合液が均一な外観を維持するもの
「なんとなく水に混ざりそう」ではなく、20℃で純水と混ぜて均一な外観を保つかどうかという試験の結果で決まる、ということです。上の表でいうと、アセトン・メタノール・エタノールが水溶性、ガソリン・灯油・軽油・ベンゼン・トルエンが非水溶性にあたります。
この区分によって、変わるものが2つあります。
1つめは指定数量です。同じ区分でも水溶性は非水溶性の2倍になり、アルコール類だけは区別なく一律です。数値の一覧と倍数の計算は第4類の指定数量一覧と倍数の計算にまとめてあるので、そちらで確認してください。
2つめは泡消火薬剤の種類です。こちらがこの科目の本題です。アルコールやアセトンのような水溶性の液体には、ふつうの泡ではなく「水溶性液体用泡消火薬剤」(現場では耐アルコール泡・アルコール型泡と呼ばれます)を使います。これは条文で決まっています。
| 燃えているもの | 使う泡消火薬剤 |
|---|---|
| 第4類のうち水に溶けないもの(ガソリン・灯油など) | たん白泡消火薬剤/水成膜泡消火薬剤 |
| 第4類のうち水に溶けるもの(アルコール・アセトンなど) | 水溶性液体用泡消火薬剤 |
製造所等の泡消火設備の技術上の基準の細目を定める告示(平成23年総務省告示第559号)第17条が、この振り分けを定めています。消防法施行規則第34条の3や泡消火薬剤の規格省令でも、水溶性液体用泡消火薬剤はふつうの泡消火薬剤とは別のものとして扱われています。
理由は、ふつうの泡は水を含んでいるため、水と混ざり合う液体の上では泡が壊れてしまうからです。泡の層が液面を覆えなければ、空気を遮断できません。「アルコール火災に普通の泡は効かない」はここから来ています。
第4類の火災に棒状の水を使わない理由
理由は2つあり、どちらも比重で説明できます。
- 浮く……第4類のほとんどは比重が1未満です。水をかけても下に沈まず、燃えたまま水面に浮きます
- 広がる……棒状の水は勢いがあるので、浮いた危険物を押し流します。火のついた油が水と一緒に流れ出し、燃える範囲が一気に広がります
つまり水は「消す」どころか「運ぶ」役割をしてしまいます。第4類の消火は、液面を覆って空気を絶つ(窒息)か、燃焼の連鎖反応を止める(抑制)のどちらかが基本になります。
ただし「水はすべてだめ」ではありません。同じ水系でも、霧状にした強化液や水噴霧消火設備は第4類に適応します。細かくしたぶん液面を押し流す力が弱く、熱を奪う働きが前に出るためです。次の表で、どれが○でどれが×かを確認してください。
図解で確認:第4類の火災に「棒状の水」は使わない
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図解の参考:消防試験研究センター「過去に出題された問題」乙種第4類 問30(図解追加:2026年9月10日)
適応する消火設備は政令 別表第五で決まっている
「泡・粉末・二酸化炭素・ハロゲン化物」と丸暗記されがちですが、正確な答えは危険物の規制に関する政令 別表第五にあります。第4類の欄に○が付いているものと、付いていないものは次のとおりです。
| 第4類に適応する(○) | 第4類に適応しない(○が無い) |
|---|---|
| 水蒸気消火設備・水噴霧消火設備 | 屋内消火栓設備・屋外消火栓設備 |
| 泡消火設備/泡を放射する消火器 | スプリンクラー設備 |
| 不活性ガス消火設備/二酸化炭素を放射する消火器 | 棒状の水を放射する消火器 |
| ハロゲン化物消火設備/ハロゲン化物を放射する消火器 | 霧状の水を放射する消火器 |
| 粉末(りん酸塩類等・炭酸水素塩類等) | 棒状の強化液を放射する消火器 |
| 霧状の強化液を放射する消火器 | 粉末(その他のもの) |
| 乾燥砂/膨張ひる石・膨張真珠岩 | 水バケツ又は水槽 |
間違えやすいのが強化液です。同じ強化液でも棒状は×、霧状は○。「霧状なら何でも○」ではなく、霧状の水は別表第五の第4類の欄に○がありません(設備としての水噴霧消火設備は○です)。ここは表のとおりに覚えるしかないところです。
消火剤ごとの主な働きも整理しておきます。
| 消火剤 | 主な働き | 注意点 |
|---|---|---|
| 泡 | 窒息(液面を覆う) | 水溶性の液体には水溶性液体用泡消火薬剤を使う |
| 粉末 | 抑制(連鎖反応を止める) | 冷却効果はほとんどない。高温が残っていると再燃する |
| 二酸化炭素 | 窒息(酸素濃度を下げる) | 同じ理屈で人も酸欠になる。狭い密閉空間では危険 |
| ハロゲン化物 | 抑制 | 電気設備の火災にも使える |
| 乾燥砂 | 窒息(覆う) | すべての類に使える。少量の漏えい時に有効 |
「泡と粉末を同時に使うと、粉末が泡を壊してしまう」という組み合わせの問題もあります。消防庁の資料でも、粉末消火剤によって泡の層が壊される実験が示されています。
間違えやすい3つと、練習問題
最後に、条件が逆になっていて引っかかりやすいところを3つだけ挙げます。
| 問われ方 | 正しい扱い |
|---|---|
| 容器は密栓? 場所は密閉? | 容器は密栓、場所は換気。蒸気が低所にたまるので、場所を密閉すると濃度が上がって燃焼範囲に入ります |
| 容器は満杯にする? | しません。温度が上がると液体は膨張するので、上部に空間を残します |
| 引火点が高ければ安全? | いいえ。霧状・布にしみ込んだ状態では引火点より低い温度でも引火します |
ここまで読んだら、あとは問題を解いて「数値の入れ替え」に気づけるかを試すだけです。合格ドリルには乙4「危険物の性質・火災予防・消火」の練習問題が44問あります。この記事で扱った引火点・比重・消火方法がそのまま問われる形になっていて、1問ずつ「なぜそうなるか」と出典が付いています。
他の科目もまとめて確認するなら乙4のトップページから、法令・物理化学のドリルにも進めます。この科目は6問取れないと不合格なので、まずこの科目を1周して、間違えたところだけ表に戻る使い方をおすすめします。
図解で確認:容器は「密栓」、場所は「換気」
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図解の参考:消防試験研究センター「過去に出題された問題」乙種第4類 問27(図解追加:2026年9月10日)
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科目ごとに問題を解く
次にやること
危険物取扱者 乙種第4類のページに、ほかの解説記事もまとめています。