「物理・化学」10問の攻略
【捨てられない理由と出るところ】
乙4で「物理化学が苦手」「いっそ捨てたい」と考える人はとても多い科目です。先に結論を書くと、この科目は捨てられません。ただし、出てくるのは高校化学のごく一部で、計算もほとんどありません。何をどの順で押さえればよいかを、条文と試験の公式情報にあたって整理しました。
最終確認:2026年8月18日 根拠:試験科目及び問題数・試験の方法・危険物の規制に関する政令 ほか
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「捨てていいですか」への答え:捨てられません
乙4の合格基準は「試験科目ごとの成績が、それぞれ60%以上」です。合計点ではありません。
他の科目はどうか
3科目とも6割ですが、問題数が違うので「落としてよい数」が変わります。法令だけ15問あるので、6問まで間違えられます。
| 科目 | 問題数 | 必要な正答 | 許される間違い |
|---|---|---|---|
| 危険物に関する法令 | 15問 | 9問 | 6問まで |
| 基礎的な物理学及び基礎的な化学 | 10問 | 6問 | 4問まで |
| 危険物の性質・火災予防・消火 | 10問 | 6問 | 4問まで |
物理・化学だけ5問正解では不合格です。法令や性質・消火で満点を取っても補えません。
だから「捨てる」のではなく、6問だけ取りにいく勉強をしましょう。満点はいりません。4問は落としてよい、と考えると気持ちがだいぶ楽になります。試験全体の形は乙4の試験概要にまとめています。
出るのは高校化学の全部ではありません
では、6問取るために何を覚えればよいのでしょうか。安心してください。高校化学を最初から勉強し直す必要はありません。
「化学がわからない」と感じる人の多くは、高校の教科書1冊ぶんを思い浮かべて怖がっています。実際に問われるのは、危険物を安全に扱うために必要な範囲に限られます。
| 分野 | 問われること |
|---|---|
| 物質の状態 | 固体・液体・気体(三態)、沸点と圧力、比重と蒸気比重、体膨張、蒸発熱 |
| 燃焼 | 燃焼の三要素、引火点・発火点・燃焼範囲、燃焼の形態(蒸発燃焼など) |
| 消火 | 除去・窒息・冷却・抑制の4つと、水・二酸化炭素・ハロゲン化物がどれに当たるか |
| 化学変化 | 物理変化と化学変化の違い、酸化と還元、単体・化合物・混合物、代表的な官能基 |
| 熱 | 熱の移動(伝導・対流・放射)、比熱、熱量の計算 |
| 静電気 | 発生する条件と、たまらないようにする方法 |
| 金属の腐食 | さびが進む条件と、それを防ぐ考え方 |
モルの計算、化学平衡、有機化学の反応機構といった、高校化学でつまずきやすいところは中心ではありません。覚える量より、言葉の区別のほうが大事な科目です。
図解で確認:物理変化と化学変化の見分け方
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図解の参考:消防試験研究センター「過去に出題された問題」乙種第4類 問25(図解追加:2026年9月10日)
図解で確認:単体・化合物・混合物の区分
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図解の参考:消防試験研究センター「過去に出題された問題」乙種第4類 問23(図解追加:2026年9月10日)
図解で確認:酸化と還元は必ず同時に起こる
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図解の参考:消防試験研究センター「過去に出題された問題」乙種第4類 問17(図解追加:2026年9月10日)
いちばんの得点源は「用語の区別」
この科目では、似た用語の言い分けが問われます。表で違いを整理し、問題で使い分けられるか確かめましょう。
図解で確認:引火点と発火点の違い
まずは「点火源が必要かどうか」に注目してください。引火点では火や火花などの点火源が必要です。発火点では、点火源を近づけなくても、加熱によって自ら発火します。
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液体を例にした模式図です。液体から出た蒸気が燃える様子を示しています。
図解の参考:消防庁「消防法に基づく方法による引火点、発火点テスト」(図解追加:2026年9月9日)
この違いを押さえたら、燃焼範囲などの用語も表で見比べましょう。
| 用語 | 意味 | 区別のポイント |
|---|---|---|
| 引火点 | 火を近づけると燃え出す蒸気が出る、いちばん低い液温 | 点火源が要る。温度の話 |
| 発火点 | 点火源がなくても、加熱によって自ら燃え出す最低の温度 | 点火源が要らない。温度の話 |
| 燃焼範囲 (爆発範囲) | 空気中の蒸気が燃えられる濃度の範囲 | 温度ではなく濃度。下限値と上限値の間だけ燃える |
| 沸点 | 液体が沸きたつ温度 | 外の圧力が下がれば沸点も下がる(山の上でお湯が早く沸くのと同じ) |
| 比重 | 水と比べた重さ | 1より小さければ水に浮く。第4類の多くは水に浮く |
| 蒸気比重 | 空気と比べた蒸気の重さ | 1より大きければ低いところにたまる。ピット・地下・くぼみが危険 |
引っかけの定番は「引火点=点火源が要る/発火点=要らない」と、「燃焼範囲は温度ではなく濃度」の2つです。逆に書いた選択肢が並ぶので、日本語として言い切れるようにしておいてください。
なお、この「引火点」は法令側でも第4類を7つに分ける基準になっています(第一石油類は21度未満、第二石油類は21度以上70度未満など)。第4類とはのページと合わせて見ると、物理・化学と法令が同じ話をしていることがわかります。
図解で確認:燃焼範囲は「濃度」の範囲
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図解の参考:消防試験研究センター「過去に出題された問題」乙種第4類 問31(図解追加:2026年9月10日)
図解で確認:燃えているのは液体ではなく「蒸気」
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図解の参考:消防試験研究センター「過去に出題された問題」丙種 問13(図解追加:2026年9月10日)
図解で確認:蒸気比重が1より大きい蒸気は"下"にたまる
引火点の次に取り違えやすいのが蒸気比重です。空気より重い蒸気は床に沿って流れ、排水溝・地下ピット・くぼみにたまる——換気を低い位置で行う理由がこの一枚で分かります。
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図解の参考:消防試験研究センター「過去に出題された問題」丙種 問21(図解追加:2026年9月10日)
まず押さえたい計算は3タイプ。熱化学まで出た年もあります
「計算問題があるから無理」と思われがちですが、出てくる式の種類は多くありません。まず優先して押さえたいのは次の3タイプです。
1)比重(密度)から重さを出す
比重0.75のガソリン200Lは何kgか。
0.75 × 200 = 150 → 150kg。かけ算1回です。
2)質量パーセント濃度
濃度(%) = 溶けているものの質量 ÷ 溶液全体の質量 × 100
水90gにエタノール10gを溶かしたら、全体は100gなので 10 ÷ 100 × 100 = 10 → 10%。分母は「水の量」ではなく「全体の量」、ここだけ注意します。
3)熱量
熱量 = 質量 × 比熱 × 温度差
比熱は物質ごとに決まった値で、水はおよそ4.2ジュール毎グラム毎ケルビンです。水100gを20度から70度にするなら 100 × 4.2 × 50 = 21,000 → 約21キロジュール。
この3つで使うのはかけ算・わり算だけで、関数も方程式も出てきません。
ただし「計算はこの3つだけ」と決めつけないでください。消防試験研究センターが公開している乙4の問題では、問22に熱化学の計算が出ています。水素・炭素・プロパンの燃焼熱からプロパンの生成熱を求める、という形です。化学反応式は問題に書かれているので、あとは燃焼熱を足し引きするだけですが、上の3タイプしか見ていないと面食らいます。
上の3タイプを練習したら、熱化学の公表問題にも取り組みます。この記事の例だけで本番の計算範囲を限定せず、用語の区別と計算の両方を確認してください。
燃焼の三要素と、消火の4つは必ず組で覚える
燃焼が起こるには、次の3つがそろう必要があります。これが燃焼の三要素です。
- 可燃物(燃えるもの)
- 酸素供給源(空気、酸化剤など)
- 点火源(熱源。火花・静電気放電・高温面など)
そして消火は、この3つのどれかを断つことだと考えると、そのまま次の表になります。
| 消火の方法 | 何をするか | 代表例 |
|---|---|---|
| 除去消火 | 可燃物を取り除く | ガスの元栓を閉める |
| 窒息消火 | 酸素を断つ(濃度を下げる) | 二酸化炭素、窒素、泡、粉末 |
| 冷却消火 | 熱を奪って温度を下げる | 水(気化熱で熱を奪う) |
| 抑制消火 (負触媒消火) | 燃焼の連鎖反応を止める | ハロゲン化物、粉末 |
三要素に「連鎖反応」を足した4つを燃焼の四要素と呼ぶこともあり、抑制消火はこの4つ目に対応します。
燃焼の形態も定番です。第4類は引火性の液体ですが、燃えているのは液体そのものではなく液面から出た蒸気で、これを蒸発燃焼といいます。「液体が燃えている」と書かれた選択肢は誤りです。
なぜ蒸気が主役なのかが分かると、引火点も燃焼範囲も静電気も一本の線でつながります。第4類の火災は、こぼれた液体ではなく、その上にたまった蒸気に火がつく——ここがこの科目の背骨です。
図解で確認:燃焼の三要素
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図解の参考:消防庁 検討会資料2-2「第2章 基礎的知識」(図解追加:2026年9月10日)
図解で確認:消火の4つの方法
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図解の参考:消防試験研究センター「過去に出題された問題」丙種 問14(図解追加:2026年9月10日)
図解で確認:蒸発するとき、周囲から熱を奪う
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図解の参考:消防試験研究センター「過去に出題された問題」乙種第4類 問25(図解追加:2026年9月10日)
図解で確認:不活性ガス消火は「酸素濃度を下げる」窒息消火
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図解の参考:消防試験研究センター「過去に出題された問題」乙種第4類 問19(図解追加:2026年9月10日)
静電気は、条文にも繰り返し出てくる論点です
静電気は「点火源」になります。ガソリンのように電気を通しにくい液体は、流れたり摩擦したりするだけで静電気がたまり、放電の火花が蒸気に引火します。
これは覚え書きの話ではなく、危険物の規制に関する政令が具体的に対策を義務づけています。
| 条文 | 内容 |
|---|---|
| 政令第9条第1項第18号 | 静電気が発生するおそれのある設備には、蓄積される静電気を有効に除去する装置を設けること |
| 政令第11条第1項第10号 | ガソリン、ベンゼンその他静電気による災害が発生するおそれのある液体の危険物の屋外貯蔵タンクの注入口付近には、静電気を有効に除去するための接地電極を設けること |
| 政令第15条第1項第14号 | ガソリン、ベンゼンその他静電気による災害が発生するおそれのある液体の危険物の移動貯蔵タンクには、接地導線を設けること |
| 政令第27条 | 移動貯蔵タンクに入れ、又は出すときは接地すること。上部から注入するときは注入管を用い、その先端をタンクの底部に着けること |
試験で問われる対策は、次の3つに整理できます。
- 接地(アース)する …… たまった電気を地面へ逃がす
- 流速を遅くする …… 速く流すほど発生します。「流速を速くする」は誤りの定番
- 湿度を高くする …… 乾燥しているほどたまります。「湿度を低く保つ」は誤り
「注入管の先端をタンクの底部に着ける」のも静電気対策です。上から落とすと液がはねてかき混ぜられ、静電気が増えるためです。理由まで押さえると、似た選択肢に迷わなくなります。
図解で確認:静電気は「流れ・摩擦」で生まれ、放電が点火源になる
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図解の参考:消防庁 検討会資料2-2「第2章 基礎的知識」(図解追加:2026年9月10日)
熱の移動と金属の腐食も、理屈で押さえる
熱の移動は3通りです。
| 移動のしかた | どういうことか | 例 |
|---|---|---|
| 伝導 | 触れているものを伝わる | 金属の棒の端を熱すると反対側も熱くなる |
| 対流 | 温まった流体自身が動いて運ぶ | ふろの湯、部屋の暖房 |
| 放射 | 離れていても電磁波で伝わる | たき火に手をかざすと暖かい |
あわせて、温度が上がると液体は体積が膨張し、蒸気圧も上がります。容器を満たしきらずに空間(空隙)を残すのは、この膨張を逃がすためです。
金属の腐食(さび)は、地下のタンクや配管で問題になります。進みやすいのは次のような条件です。
- 湿った土壌、水はけの悪い場所
- 異なる種類の金属が接している場所(電池のようになって片方が溶ける)
- 電気設備からの迷走電流が流れる場所
- 酸性の強い土壌
政令も、製造所の配管について「外面の腐食を防止するための措置を講ずること」と定めています。腐食は法令側の設備基準と直結する論点です。
図解で確認:温度が上がると液体は膨張し、蒸気圧も上がる
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図解の参考:消防試験研究センター「過去に出題された問題」乙種第4類 問25(図解追加:2026年9月10日)
図解で確認:外圧が下がると沸点も下がる
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図解の参考:消防試験研究センター「過去に出題された問題」乙種第4類 問25(図解追加:2026年9月10日)
苦手な人がやる順番
この科目は、範囲を広げるより順番で決まります。10問中6問が目標です。
- 引火点・発火点・燃焼範囲の言い分けを固める …… 用語の区別として問われるところです。3つを自分の言葉で説明できるようにします
- 燃焼の三要素と消火の4方法を組で覚える …… 表の縦の対応(酸素を断つ=窒息、熱を奪う=冷却)で覚えると忘れません
- 静電気の対策3つ …… 接地する・流速を遅くする・湿度を上げる。逆に書いた選択肢を見抜けるようにします
- 比重と蒸気比重 …… 「液体は水に浮く/蒸気は低いところにたまる」。第4類の性質そのものです
- 計算3種を手で解く …… 比重・濃度・熱量。まずは最低1回、自分の手で解いておきます
- 残り(物理変化と化学変化、酸化と還元、熱の移動、腐食)を流す …… ここは深追いしません
1から4は復習を始める順番の例です。科目全体の問題を解き、6割に届かないときは誤答した分野へ戻ります。
科目全体の時間配分は勉強時間の考え方、独学で進めるときの注意は乙4は独学で受かる?に書いています。
読んだあとは、選択肢の形で解いてください
物理・化学は五肢択一で出ます。読んで分かった気になっても、選択肢を並べられると迷うのがこの科目の怖いところです。とくに引火点と発火点、燃焼範囲の「温度か濃度か」は、文章で読むと当たり前でも、本番の五肢の中では入れ替わっていても気づきにくくなります。
合格ドリルでは、乙4「物理・化学」の練習問題(36問)を無料で公開しています。この記事で挙げた燃焼・静電気・物質の状態・化学変化・消火理論・熱の各分野から出していて、1ステップ5問・約3分なので通勤時間でも進められます。
解いたあとに6問に届いていなければ、上の「やる順番」の1から3に戻る——この往復がいちばん早い直し方です。乙4のトップから法令・性質・消火の3科目とも解けます。配点が最大の法令については「法令」15問の攻略に、出るところを条文の数値つきでまとめています。
編集:合格ドリル運営者|作成と検証の手順は運営者情報に、 誤りを見つけた場合の訂正は訂正履歴で公開しています。
科目ごとに問題を解く
次にやること
危険物取扱者 乙種第4類のページに、ほかの解説記事もまとめています。