労働衛生(有害業務以外)の攻略
【まぎらわしいペアで覚える】
この範囲は第一種で7問、第二種で10問。法令と違い、数字を丸暗記しなくても理屈で切れる問題が多い範囲です。ただし試験は似た言葉のペアを区別して判断する練習が大切です。そこを対比で整理します。
最終確認:2026年8月18日 根拠:安全衛生技術試験協会 公表試験問題・同協会「第一種・第二種衛生管理者の紹介」・事務所衛生基準規則 ほか
目次から選ぶ14の項目から読みたいところへ
第一種7問・第二種10問。第二種では3分の1を占める
| 受験する試験 | 出題数 | 配点 | 4割の足切り |
|---|---|---|---|
| 第一種 | 7問 | 70点(1問10点) | 28点=3問 |
| 第二種 | 10問 | 100点(1問10点) | 40点=4問 |
第一種は44問400点、第二種は30問300点です。第二種を受ける人にとって、この範囲は全30問の3分の1を占めます。第一種でも1問10点と重く、有害業務の範囲(1問8点)より1問の価値が高い範囲です。
この範囲の性格をひとことで言うと、「条文の丸暗記より、理屈で選択肢を切る」範囲です。元になっているのは事務所衛生基準規則と、厚生労働省が出しているいくつかの指針・ガイドライン。どれも「働く人の体に何が起きるか」から書かれているので、意味が分かれば覚えやすくなります。
厚生労働省の指針類は、たいてい「作業環境管理」「作業管理」「健康管理」の順に並んでいます。腰痛予防対策指針も情報機器作業ガイドラインもこの並びです。バラバラの知識に見えるものも、この3つの引き出しに入れると整理できます。
温熱環境|要素は4つ、実効温度は3つ
- 実効温度 → 気流を含む
気温・湿度・気流で温熱感を表す。ふく射熱は含まない。
- WBGT → 黒球温度を使う
放射熱を拾い、暑熱環境の熱ストレスを評価する。
WBGTの算式は日射の有無で異なります。使う温度と係数は、この節の2つの式で確認してください。
まず温度感覚を左右する環境の要素は4つです。気温・湿度・気流・ふく射(放射)熱。ここが出発点になります。
ところが、それを1つの温度の数字にまとめた実効温度は、4つのうち3つしか使いません。ふく射熱が入らないのです。ここが第一種・第二種の両方で繰り返し問われています。
| 実効温度 | WBGT(暑さ指数) | |
|---|---|---|
| 使う要素 | 気温・湿度・気流 (ふく射熱は入らない) | 自然湿球温度・黒球温度・気温(乾球温度) |
| 何のため | 人の温熱感を温度目盛りで表す | 暑熱環境による熱ストレスの評価 |
| 覚えどころ | 「気流」が入って「ふく射熱」が抜ける | 「黒球」が入る=放射熱を拾う |
WBGTの算出式は、日射のあるなしで分かれます。
- 日射がある場合:0.7×自然湿球温度+0.2×黒球温度+0.1×乾球温度
- 日射がない場合(屋内など):0.7×自然湿球温度+0.3×黒球温度
どちらも自然湿球温度が0.7で共通です。湿度が暑さのつらさをいちばん左右する、という考え方が式に出ています。
引っかけの定番がもう1つ。WBGTの値が基準値を「超える」ときに熱中症のリスクが高まります。「基準値未満である場合にリスクが高まる」と書いてあれば誤りです。実際に令和7年の公表問題(第一種問28・第二種問14)で、これが誤りの選択肢として出ました。
もう1つ、相対湿度は「空気中の水蒸気量と、その温度における飽和水蒸気量との比を百分率で示したもの」です。「空気1立方メートルあたりの水蒸気の重さ」は絶対湿度のほうで、別物です。
事務室の空気環境|「室の空気」と「送り込む空気」で数字が違う
事務所衛生基準規則の数字は、2つの列に分けて覚えると混乱しません。ふつうの室に求められる水準と、空気調和設備(エアコンなど)や機械換気設備で供給する空気に求められる水準は、別の条文で、別の数字だからです。
| 項目 | 室の空気(第3条) | 設備で供給する空気(第5条) |
|---|---|---|
| 一酸化炭素 | 50ppm以下 | 10ppm以下 (外気汚染で困難なら20ppm以下) |
| 二酸化炭素 | 5,000ppm以下 | 1,000ppm以下 |
| 浮遊粉じん | ― | 0.15mg/立方メートル以下 |
| ホルムアルデヒド | ― | 0.1mg/立方メートル以下 |
| 気流 | ― | 0.5メートル毎秒以下 |
二酸化炭素の5,000と1,000は、桁が同じで数字だけ違うので入れ替えて出題されます。「設備でわざわざ浄化して送り込む空気なのだから、室の空気より厳しい」と結びつけて覚えると間違えません。
そのほか、条文で決まっている数字です。
- 気積(第2条)……労働者1人について10立方メートル以上。ただし設備の占める容積と、床面から4メートルを超える高さにある空間は除いて計算します
- 換気(第3条第1項)……直接外気に向かって開放できる部分の面積が、常時床面積の20分の1以上。換気が十分に行われる性能の設備があればこの限りではありません
- 温度(第4条)……室の気温が10度以下のときは暖房等の措置。冷房するときは、室の気温を外気温より著しく低くしてはいけません
- 努力義務(第5条第3項)……空気調和設備を設けている場合、気温18度以上28度以下、相対湿度40%以上70%以下になるよう努める
- 測定(第7条)……中央管理方式の空気調和設備を設けた建築物の室は、2か月以内ごとに1回、一酸化炭素と二酸化炭素の含有率・室温と外気温・相対湿度を測定し、記録を3年間保存
必要換気量の計算|式の意味から追えば覚えなくていい
この範囲でただ1つ計算が出るのが必要換気量です。式はこれです。
必要換気量Q(立方メートル毎時)= D ÷(B − C)× 1,000,000
D:在室者全員が1時間に呼出する二酸化炭素量(立方メートル毎時)
B:室内二酸化炭素基準濃度(ppm)
C:外気の二酸化炭素濃度(ppm)
丸暗記しなくても、次の3段で組み立てられます。
- 何を薄めたいのか……人が吐き出す二酸化炭素です。だから分子は「1時間にどれだけ出るか(D)」
- 1立方メートルの外気が、どれだけ引き受けられるか……外気にもすでに二酸化炭素は入っています(C)。室内で許される濃度(B)との差のぶんだけしか引き受けられません。だから割るのは(B − C)
- 単位をそろえる……ppmは100万分の1です。濃度差を体積の割合に直すために100万を掛けます
引っかけは2か所です。1つは「測定値」ではなく「基準濃度」を使うこと。式にAとして測定値が並んでいても、使うのはBです。もう1つは掛けるのが100ではなく100万であること。令和7年10月公表の第二種問13は、この2か所だけを入れ替えた5択でした。
実際に計算してみます。第一種問33で出た形です。
外気と入れ換える空気の量が1時間あたり600立方メートル、外気の二酸化炭素濃度が400ppm、室内を1,000ppm以下に保ちたい。1人が1時間に呼出する二酸化炭素量が0.018立方メートルのとき、在室できる最大の人数は何人か。
- 濃度差は 1,000 − 400 = 600ppm
- 600立方メートルの空気が引き受けられる二酸化炭素は 600 ×(600 ÷ 1,000,000)= 0.36立方メートル
- 1人が0.018立方メートルなので 0.36 ÷ 0.018 = 20人
式を「Q=…」の形で覚えるより、「濃度差100万分のいくつ」×「換気量」=「引き受けられる量」と考えたほうが、人数を求める問題にも量を求める問題にも同じやり方で対応できます。
採光・照明|300ルクスと「10分の1以上」
照度の基準は、どの規則で問われているかで数字が変わります。事務室なら事務所衛生基準規則、一般の作業場なら労働安全衛生規則です。
| 事務所衛生基準規則 第10条(事務室) | 労働安全衛生規則 第604条(作業場) |
|---|---|
| 一般的な事務作業 300ルクス以上 | 精密な作業 300ルクス以上 |
| 付随的な事務作業 150ルクス以上 | 普通の作業 150ルクス以上 |
| ― | 粗な作業 70ルクス以上 |
どちらも「作業面の照度」で、感光材料を取り扱う室などは対象外です。事務所衛生基準規則ではさらに、明暗の対照が著しくなく、かつまぶしさを生じさせない方法によること、照明設備は6か月以内ごとに1回、定期に点検することが定められています。
そして、この節で区別したいペアがこれです。
| 全般照明 | 局部照明 | |
|---|---|---|
| 役割 | 部屋全体を明るくする | 手元だけを明るくする |
| 2つを併用するとき | 全般照明の照度は、局部照明による照度の10分の1以上にする | |
「10分の1以下」と書いてあれば誤りです。手元だけがまぶしく光って周りが真っ暗、という状態は目に悪い。だから全体もある程度は明るくしておく、という理屈です。第一種問34・第二種問20・令和7年10月公表の第二種問12と、繰り返し同じ形で出ています。
あわせて、選択肢でよく入れ替えられる言い回しを並べます。すべて公表試験問題で正誤が確定しているものです。
- 照度の単位はルクス。1ルクスは、光度1カンデラの光源から1メートル離れた所で、その光に直角な面が受ける明るさです(「10メートル離れた所」は誤り)
- 前方から明かりを取るときは、眼と光源を結ぶ線と視線とがなす角度が、おおむね30度以上になるようにします(「30度以下」は誤り)
- 部屋の彩色は、目の高さ以下はまぶしさを防ぎ安定感を出すため濁色、目より上方の壁や天井は明るい色(上下が逆なら誤り)
- 北向きの窓は、直射日光はほとんど入らないが一年中平均した明るさが得られます
- あらゆる方向から同程度の明るさの光がくると、見る物に影ができず立体感がなくなるため、かえって不都合な場合があります
- 高齢者は若年者より高い照度が必要ですが、水晶体の混濁でまぶしさを感じやすい場合もあり、明るくすれば解決とは限りません
情報機器作業|300ルクス・40cm・1時間
パソコン作業のルールは「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」で定められています。数字が多い割に、覚えるのは3つの数字です。
| 場面 | 基準 |
|---|---|
| 照度 | 書類上及びキーボード上における照度は300ルクス以上とし、作業しやすい照度とする |
| 視距離 | おおむね40cm以上の視距離を確保する |
| 一連続作業時間 | 1時間を超えないようにし、次の連続作業までの間に10分〜15分の作業休止時間を設け、かつ一連続作業時間内に1回〜2回の小休止を設ける |
照度で気をつけたいのは、基準がかかっているのは「ディスプレイ画面上」ではなく「書類上及びキーボード上」だという点です。画面は自分で光るので、明るさの基準を当てる対象ではありません。あわせて、ディスプレイ画面の明るさ・書類やキーボード面の明るさと、周辺の明るさの差はなるべく小さくします。
まぶしさ(グレア)の防止としては、太陽光が画面に入る場合はブラインドやカーテンを設ける、間接照明等のグレア防止用照明器具を用いる、といった措置が挙げられています。
作業姿勢は次のとおりです。
- 椅子に深く腰をかけて背もたれに背を十分にあて、履き物の足裏全体が床に接した姿勢を基本とする。必要に応じて足台を備える
- 椅子と大腿部膝側背面との間に手指が押し入る程度のゆとりをもたせる
- ディスプレイは、その画面の上端が眼の高さとほぼ同じか、やや下になる高さが望ましい
- 表示する文字の高さは、おおむね3mm以上が望ましい
- 座位のほか、時折立位を交えて作業することが望ましい
健康診断は、配置前健康診断と、配置後の1年以内ごとに1回の定期健康診断です。項目には自覚症状の調査(眼、上肢・頸肩腕部・腰背部、ストレス)、眼科学的検査(遠見視力・近見視力・屈折検査など)、筋骨格系に関する検査が含まれます。一般健康診断と併せて実施しても差し支えありません。
腰痛予防|「体重の40%」と「一律には使わない」
「職場における腰痛予防対策指針」からは、数値と言い回しの両方が出ます。
| 項目 | 指針の内容 |
|---|---|
| 人力のみで取り扱う重量 | 満18歳以上の男性は、体重のおおむね40%以下となるよう努める |
| 女性の場合 | さらに、男性が取り扱うことのできる重量の60%位まで |
| それを超えるとき | 身長差の少ない労働者2人以上で、各々に重量が均一にかかるようにする |
| 健康診断 | 作業に配置する際及びその後6か月以内ごとに1回 |
| 腰部保護ベルト | 一律に使用させるのではなく、労働者ごとに効果を確認してから適否を判断する |
腰部保護ベルトの1行は、公表試験問題で「適切でないもの」を選ばせる形で何度も使われています。「労働者全員に使用させる」「一律に着用させる」と書いてあれば誤りです。効き方に個人差があるから、というのが理由です。指針の中で「一律に」を否定しているのは、実はこの腰部保護ベルトくらいしかありません。
持ち上げ方も、指針の言葉のまま出ます。
- 床面等から荷物を持ち上げるときは、片足を少し前に出し、膝を曲げ、腰を十分に下ろして荷物を抱え、膝を伸ばすことによって立ち上がる
- できるだけ身体を対象物に近づけ、重心を低くする
- はい付け・はいくずしでは、できるだけはいを肩より上で取り扱わない
- 2人以上での作業では、可能な範囲で身長差の大きな労働者同士を組み合わせない
- 著しく重心の偏っている荷物は、その旨を明示する
作業環境の側では、寒冷ばく露は腰痛を悪化させ、または発生させやすくするため、屋内では作業場内の温度を適切に保つこととされています。腰痛と温度が結びつくのは意外に思えますが、指針にはっきり書かれています。
労働衛生管理統計|分母が違えば別物です
- 疾病なし → 陽性と判定
偽陽性率の分母は「疾病がない人」。受検者全員ではない。
- 疾病あり → 陰性と判定
偽陰性率の分母は「疾病がある人」。受検者全員ではない。
本文の計算例では、疾病なし955人・疾病あり45人に分けて計算しています。
統計は言葉の定義だけを問う問題が出ます。数学の知識は要りません。ここが最大のまぎらわしいペアの巣です。
| 有所見率 | 発生率 | |
|---|---|---|
| 数えるもの | ある時点での検査で有所見と判定された人の割合 | 一定の期間に新たに発生した人の割合 |
| 性格 | ある瞬間を切り取った静的な数字 | 期間内の動きを見る数字 |
「有所見率は発生率と同じ意味で用いられる」と書いてあれば誤りです。令和7年10月公表の第二種問19で、これがそのまま誤りの選択肢になりました。健康診断で毎年「有所見者〇%」と出るあの数字は、その年に新しく悪くなった人の割合ではない、ということです。
次が偽陽性率と偽陰性率。分母がまったく違います。
| 偽陽性率 | 偽陰性率 | |
|---|---|---|
| 意味 | 疾病無しの者を陽性と判定する率 | 疾病有りの者を陰性と判定する率 |
| 分母 | 疾病が無い人の数 | 疾病が有る人の数 |
| 言いかえ | 健康な人を「疑いあり」にしてしまった | 病気の人を見逃してしまった |
実際の計算を1つ通しておきます。第二種問11で出た数字です。1,000人を検査したところ、疾病有りが45人(うち陽性35人・陰性10人)、疾病無しが955人(うち陽性160人・陰性795人)でした。
- 偽陽性率 = 160 ÷ 955 = 約16.8%
- 偽陰性率 = 10 ÷ 45 = 約22.2%
ここで分母をうっかり受検者1,000人にすると、160÷1,000=16.0%、10÷1,000=1.0%となります。この数字がちゃんと誤りの選択肢として用意されています。分母を間違えた答えが選択肢に並んでいると思って解いてください。
休業の統計も、割るものと掛ける数で見分けます。
| 指標 | 算式 |
|---|---|
| 病休度数率 | 疾病による休業件数 ÷ 在籍労働者の延べ実労働時間数 × 1,000,000 |
| 疾病休業日数率 | 疾病休業延べ日数 ÷ 在籍労働者の延べ所定労働日数 × 100 |
「度数率」は件数を時間で割る、「日数率」は日数を日数で割る、と対にすると入れ替えに気づけます。
そのほか、統計の考え方として次の2つが繰り返し出ています。
- 平均値が等しくても分散が異なれば、異なった特徴をもつ集団と評価されます
- 統計上の相関関係が認められても、因果関係があるとは限りません
食中毒|感染型と毒素型を先に分ける
食中毒は覚える名前が多く見えますが、「菌そのものが体内で増える(感染型)」か「菌が食べ物の中で作った毒を食べる(毒素型)」かで先に二分すると整理できます。
| 感染型 | 毒素型 | |
|---|---|---|
| 何で起こるか | 細菌そのものの感染 | 食物に付着した細菌が産生した毒素 |
| 代表 | サルモネラ菌、腸炎ビブリオ、カンピロバクター | 黄色ブドウ球菌、ボツリヌス菌 |
| 加熱で防げるか | 菌を殺せば防げる | 毒素が熱に強いと加熱しても防げない |
試験が突いてくるのはカンピロバクターの位置です。「毒素型食中毒には、カンピロバクターによるものなどがある」は誤り。第二種の公表問題(食中毒の問)で、これがそのまま誤りの選択肢になりました。毒素型は黄色ブドウ球菌とボツリヌス菌の2つ、と先に固めてしまうのが早道です。
菌ごとの特徴は、1対1で結びつけて覚えます。
- 黄色ブドウ球菌の毒素は熱に強い(加熱で壊れる、は誤り)
- ボツリヌス菌の毒素は神経毒(肝臓毒、は誤り)
- 腸炎ビブリオ菌は病原性好塩菌ともいわれます(真水を好む、は誤り)
- 腸管出血性大腸菌はベロ毒素を産生し、腹痛や出血を伴う水様性の下痢などの症状が出ます
- ノロウイルスの失活には煮沸消毒または塩素系の消毒剤が効果的です(アルコールが最も有効、は誤り)
- ヒスタミンは、魚やチーズなどに含まれるヒスチジンが細菌に分解されて生成します。加熱しても分解されません
ヒスタミンは、菌が作った物質そのものが残っているという点で毒素型と考え方が同じです。「熱に強い」ものを黄色ブドウ球菌の毒素とヒスタミンの2つとしてまとめておくと、選択肢を切りやすくなります。
一次救命処置|迷ったら始める、が原則
一次救命処置は手順そのものが問われます。数字は5cmと100〜120回の2つだけです。
- 応援を呼ぶ……できる限り単独で行うことは避け、大声で周囲に呼びかけて応援を求めます
- 呼吸をみる……胸と腹部の動きを観察し、上下に動いていない場合や、よく分からない場合には心停止とみなして心肺蘇生を開始します。はっきりするまで様子を見る、は誤りです
- 気道確保……片手で額を押さえながら、もう一方の手の指であご先を上に引き上げます
- 胸骨圧迫……胸骨の下半分を、胸が約5cm沈む強さで、1分間に100〜120回のテンポで圧迫します(「胸骨の上半分」は誤り)
- AED……電気ショックを行った後や、電気ショック不要の音声メッセージが出たときも、胸骨圧迫を再開して心肺蘇生を続けます
AEDの1行は、この範囲で最も出題頻度が高い1文かもしれません。「ショック不要=もう何もしなくていい」ではありません。AEDは心臓の異常な震えを止める道具で、血液を送り出す役目は胸骨圧迫が担っているからです。救急隊に引き継ぐまで続けます。
救急処置では骨折もよく出ます。こちらは用語のペアです。
| 単純骨折 | 複雑骨折(=開放骨折) |
|---|---|
| 皮膚の下で骨が折れている | 皮膚が破れて骨が外に出ている。感染が起こりやすく治りにくい |
「複雑骨折=骨が細かく砕けた骨折」と思っていると間違えます。複雑なのは骨の折れ方ではなく、傷の状態です。あわせて、完全骨折では骨折端どうしが擦れ合う軋轢音が認められることがあります。副子を当てるときは、骨折部分の上下の関節まで固定できる長さで、かつ幅の広いものを用います。
メンタルヘルスケア|4つのケアと3つの予防
- 一次予防 → 起こる前
メンタルヘルス不調を未然に防止する。
- 二次予防 → 早く見つける
不調を早期に発見し、適切な措置を行う。
- 三次予防 → 復帰を支える
不調となった労働者の職場復帰支援等を行う。
これは予防の3段階です。「誰が担うか」を整理する4つのケアとは、別の分類として本文の表で確認してください。
「労働者の心の健康の保持増進のための指針」からは、4つのケアと3つの予防の2セットが出ます。名前と担当する役割を対応させて確認します。
| 4つのケア | 誰がやるか |
|---|---|
| セルフケア | 労働者自身が、ストレスや心の健康について理解し、自らのストレスを予防・軽減し、あるいはこれに対処する |
| ラインによるケア | 管理監督者が、職場環境を改善し、部下の相談に対応する |
| 事業場内産業保健スタッフ等によるケア | 産業医・衛生管理者などが、労働者と管理監督者を支援する |
| 事業場外資源によるケア | 事業場外の専門機関などを活用する |
「セルフ」=自分、「ライン」=上司、と押さえれば、選択肢の入れ替えは見抜けます。「人事労務管理部門が職場配置や人事異動を調整すること」はセルフケアではありません。
| 予防の段階 | 内容 |
|---|---|
| 一次予防 | メンタルヘルス不調を未然に防止する |
| 二次予防 | メンタルヘルス不調を早期に発見し、適切な措置を行う |
| 三次予防 | メンタルヘルス不調となった労働者の職場復帰支援等を行う |
令和7年10月公表の第二種問14で誤りとされたのは、「衛生委員会でストレスチェック制度の調査審議とメンタルヘルスケアの調査審議を関連付けて行うことは避ける」という選択肢でした。実際には関連付けて行うべきものです。指針の中で「〜は避ける」「〜してはならない」と言い切る選択肢は、たいてい誤りという傾向がここにも出ています。
また、労働者の心の健康は職場配置・人事異動・職場の組織等の要因に影響を受けるため、人事労務管理部門と連携することとされています。
健康保持増進(THP)|個別と集団、そしてコラボヘルス
「事業場における労働者の健康保持増進のための指針」も、押さえるのは4点だけです。
- 個別と集団の両方……生活習慣上の課題がある労働者への個別の取組と、課題の有無にかかわらず労働者を集団として捉えて実施する取組の、両方があります。どちらか一方だけ、と書いてあれば誤りです
- 客観的な数値の活用……課題の把握や目標の設定では、労働者の健康状態等を客観的に把握できる数値を活用することが望ましいとされています
- 健康指導は5つ……健康測定の結果に基づき行う健康指導には、運動指導・メンタルヘルスケア・栄養指導・口腔保健指導・保健指導が含まれます
- 衛生委員会等の活用……労使・産業医・衛生管理者等で構成される衛生委員会等を活用します
ここで取り上げるのはコラボヘルスです。医療保険者と連携して健康づくりを進める取組で、「労働者の健康状態等が把握できる客観的な数値等を医療保険者に提供してはならない」は誤りとされています。第一種問29・第二種問15の両方で、これが正解の選択肢でした。数値を共有しなければ連携そのものが成り立たないからです。
健康測定に関連してBMIも出ます。BMIが22になる場合の体重を標準体重といい、18.5以上25未満の範囲を普通体重といいます。判定基準に男女の区別はありません。また、BMIは体格全体を表す指数なので、内臓脂肪の重量と直線的に比例するわけではありません。
まぎらわしいペア総まとめ
この記事で出てきた対比を1枚にまとめます。試験直前はこの表を入口にし、説明できない項目を本文や出典で確認します。
| ペア | 左 | 右 |
|---|---|---|
| 実効温度 / WBGT | 気温・湿度・気流(ふく射熱なし) | 自然湿球・黒球・気温 |
| 室の空気 / 供給する空気 | CO 50ppm・CO2 5,000ppm | CO 10ppm・CO2 1,000ppm |
| 全般照明 / 局部照明 | 部屋全体。局部の10分の1以上 | 手元だけ |
| 事務室 / 一般の作業場(照度) | 一般的な事務作業300・付随的150 | 精密300・普通150・粗70 |
| 有所見率 / 発生率 | ある時点の割合 | 一定期間に新たにの割合 |
| 偽陽性率 / 偽陰性率 | 分母は疾病無しの人数 | 分母は疾病有りの人数 |
| 病休度数率 / 疾病休業日数率 | 件数÷実労働時間×100万 | 日数÷所定労働日数×100 |
| 感染型 / 毒素型 | サルモネラ・腸炎ビブリオ・カンピロバクター | 黄色ブドウ球菌・ボツリヌス菌 |
| 単純骨折 / 複雑骨折 | 皮膚の下で折れている | 開放骨折。感染しやすい |
| セルフケア / ラインによるケア | 労働者自身 | 管理監督者 |
| 一次 / 二次 / 三次予防 | 未然防止 / 早期発見 / 職場復帰支援 | ― |
最後にもう1つ、この範囲を通じて効く読み方を。「全員に」「一律に」「必ず」「してはならない」という表現は、対象と例外を確認してください。腰部保護ベルト、コラボヘルスの数値提供、衛生委員会での調査審議。今回挙げた誤りの選択肢の多くが、この形をしていました。言い切りという形だけで正誤は決まりません。法令上の義務・禁止に当たる記述もあるため、根拠と条件で判断します。
ドリルで確かめる
読んで分かったつもりでも、五肢択一で1文だけ入れ替えられると迷います。この範囲は選択肢の形で覚え直すのがいちばん確実です。
第一種を受ける方は → 労働衛生(有害業務以外)のドリル【第一種】
第二種を受ける方は → 労働衛生(有害業務以外)のドリル【第二種】
出題される内容は第一種・第二種で共通なので、どちらのドリルでも同じ問題に取り組めます。第二種の方は10問中4問、第一種の方は7問中3問が足切りのラインです。まずはそこを確実に超えるところから始めてください。
第一種の方は、この範囲のあとに有害業務に係るものの攻略が待っています。20問160点と量が多いので、理屈で解けるこの範囲を先に固めてしまうと、後が楽になります。科目ごとの配点と足切りは試験科目と合格基準で確認できます。
編集:合格ドリル運営者|作成と検証の手順は運営者情報に、 誤りを見つけた場合の訂正は訂正履歴で公開しています。
科目ごとに問題を解く
次にやること
衛生管理者 第一種のページに、ほかの解説記事もまとめています。