労働生理の覚え方
10問を得点源にする
労働生理は第一種でも第二種でも10問出ます。体の仕組みの話なので、法令のような細かい数値の暗記が少なく、中学から高校の生物で扱う範囲がほとんどです。ここでは安全衛生技術試験協会が公表している試験問題で、実際に正解・不正解が確定した記述だけを並べます。参考書に載っていても、公表問題で確認できなかったものは書いていません。
最終確認:2026年8月18日 根拠:安全衛生技術試験協会 公表試験問題・第一種衛生管理者 公表試験問題・第一種衛生管理者 公表試験問題 ほか
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第一種と第二種で「同じ問題」が出ている
労働生理は第一種が問35〜問44の10問(100点)、第二種が問21〜問30の10問(100点)です。第一種では1問10点で、5つある範囲のなかで配点が最も大きい範囲です。配点と合格基準そのものは試験科目と合格基準にまとめています。
ここで、協会が公表している試験問題を第一種と第二種で突き合わせてみました。
| 公表回 | 第一種 | 第二種 | 照合の結果 |
|---|---|---|---|
| 令和8年4月公表 | 問35〜問44 | 問21〜問30 | 設問文・選択肢・正解がすべて一致 |
| 令和7年10月公表 | 問35〜問44 | 問21〜問30 | 設問文・選択肢・正解がすべて一致 |
2回とも、10問すべてが同じ問題でした。違っていたのはページ下部の通し番号(「一衛19/22」と「二衛12/15」)だけです。つまり労働生理については、第一種を受ける人も第二種を受ける人もまったく同じ問題を解いていることになります。第一種と第二種の違いはこちらで整理していますが、少なくともこの範囲に差はありません。
この事実には実用的な意味があります。第二種向けに書かれた教材や問題集でも、労働生理はそのまま第一種の対策に使えるということです。逆に、第一種を受ける人が労働生理だけ特別に難しい対策をする必要はありません。
公表2回で実際に出たテーマ
2回分で出題されたテーマを、問番号(第一種の番号)で並べます。
| 問 | 令和8年4月公表 | 令和7年10月公表 |
|---|---|---|
| 35 | 感覚・感覚器 | 腎臓・尿 |
| 36 | 消化器系 | 心臓・血液循環 |
| 37 | 神経系 | ホルモンの組合せ |
| 38 | 肝臓の機能 | 蛋白質の分解・吸収・代謝 |
| 39 | 腎臓・尿 | 消化器系 |
| 40 | 血液 | 血液 |
| 41 | 視覚 | 神経系 |
| 42 | 体温調節 | 筋肉 |
| 43 | 免疫 | 体温調節 |
| 44 | 加齢による変化 | ストレス |
太字が2回とも出たテーマです。腎臓・尿/消化器系/神経系/血液/体温調節の5つが、10問中5問を占めています。問の番号は回ごとに入れ替わりますが、出てくる引き出しは共通しています。
もうひとつ、出題形式にはっきりした偏りがあります。2回とも、10問中8問が「誤っているものはどれか」型で、「正しいものはどれか」型は2問だけでした。つまりこの科目は、1つのおかしな記述を見つけるのが主な作業になります。5つの記述のうち4つは正しいのですから、正しい知識を広く浅く持っているほうが有利です。1つのテーマを深く掘るより、下に並べた論点を全部ひととおり知っているほうが点になります。
心臓と血液循環|出口と入口を入れ替えられる
心臓・肺・全身をめぐる血液の道筋
血管は心臓から出る向きが動脈、戻る向きが静脈です。肺動脈を流れるのは静脈血、肺静脈を流れるのは動脈血です。
図を拡大する +循環の問題は、通り道の順番を1か所だけ入れ替えるという作り方をされます。令和7年10月公表の問36がまさにそれでした。
| 出発 | 通る血管 | 戻る先 | |
|---|---|---|---|
| 体循環 | 左心室 | 大動脈 → 全身 | 静脈血となって右心房 |
| 肺循環 | 右心室 | 肺動脈 → 肺の毛細血管 → 肺静脈 | 左心房 |
体循環のほうは、公表問題で正しい記述として確定しています。肺循環のほうは、肺静脈が先で肺動脈が後、という向きで順路を書いた選択肢が誤りと判定されました。2つの血管の名前を入れ替えただけです。正しい順番は上の表のとおりになります。
ここから、血管名と血液の種類を混同しないための確認点が出てきます。肺動脈を流れているのは静脈血です。体循環で全身をまわって静脈血になった血液が右心房に戻り、右心室から肺動脈へ送り出されるからです。「動脈という名前だから動脈血」と考えると、そのまま間違えます。名前は心臓から出ていく血管が動脈、心臓に戻る血管が静脈という決め方で、中身の血液の話ではありません。
心臓の動き方についても、公表問題で次の2つが正しい記述として確定しています。
- 心臓を規則正しく縮ませたりゆるませたりする信号は、心臓の中の洞結節(洞房結節)で生まれ、刺激伝導系という経路を通って心筋へ届く
- 心臓が打つ速さは自律神経に支配されている
あわせて、動脈硬化についても確定しています。コレステロールがたまるなどして動脈の壁が厚く硬くなり、しなやかさをなくした状態のことです。進むと血管が狭くなったりふさがったりして、臓器へ酸素や栄養が届かなくなります。
血液|「約60%」が2つ出てくるので注意
血液は2回とも出たテーマです。公表問題で確定している内容を、成分ごとに並べます。
| 成分 | 公表問題で確定していること |
|---|---|
| 赤血球 | 骨髄でつくられる。寿命は約120日。血球のなかでいちばん数が多い |
| 好中球(白血球) | 白血球のうち約60%。偽足を出してアメーバのように動き、侵入した細菌を取り込んで処理する(貪食) |
| リンパ球(白血球) | 白血球のうち約30%。Tリンパ球やBリンパ球といった種類があり、免疫のはたらきを担う |
| 血小板 | 核を持たない不定形の細胞。血を固めるはたらきに関わる |
| 血漿 | 液体のほうの成分。アルブミン・グロブリンといった蛋白質が含まれる |
血液は血漿(液体)と有形成分からできている、という組み立てを先に押さえると、上の表が整理できます。
ヘマトクリットとは、血液の体積のうち赤血球が占める割合のことです。貧血になると値は下がります。赤血球が減るのだから割合も下がる、と考えれば理屈で覚えられます。
ABO式血液型は赤血球の分類で、A型の血清は抗B抗体を持ちます。自分と反対側の抗体を持つ、という向きです。
血が固まる仕組みも確定しています。出血したとき、血漿に溶けているフィブリノーゲンがフィブリンへと姿を変え、血球を巻き込んで固まるという流れです。「ゲン」が付くほうが手前の状態、と覚えると、後で出てくるペプシノーゲンとも並べられます。
この範囲で誤りと確定した記述が2つあります。どちらも定番の作り方です。
- 赤血球が血液全体の体積の約60%にあたる、とした記述 → 誤り(令和8年4月公表・問40)。約60%という数字は好中球が白血球に占める割合のほうで出てきます。同じ「約60%」を別のところに移すという作り方なので、数字だけを覚えていると引っかかります
- ABO式を白血球にもとづく分類だとした記述 → 誤り(令和7年10月公表・問40)。赤血球を白血球に差し替えただけです
消化|胆汁は2回分を突き合わせると決まる
消化器系も2回とも出たテーマです。まず、公表問題で確定している「何が何を分解するか」です。
| 出るもの | はたらき |
|---|---|
| 唾液 | 中身はほとんどが水。デンプンをもっと小さな糖へ変える消化酵素が入っている |
| ペプシン | ペプシノーゲンが胃酸を受けてペプシンという酵素に変わり、この酵素が蛋白質を分解する |
| 膵液 | アルカリ性。酸性の消化物が胃から十二指腸へ送られてくると分泌され、その酸を打ち消す |
| 小腸 | 内側の表面がビロード状の絨毛という細かい突起でびっしり覆われていて、栄養素を吸収する効率が高い |
| 無機塩・ビタミン類 | 酵素で分解されることなく、そのまま吸収される |
いちばん下の行では、消化の際に分解が必要な栄養素を区別します。分解が必要なのは、炭水化物・蛋白質・脂肪のように大きな分子でできた栄養素だけで、無機塩(ミネラル)とビタミンはそのまま体に取り込まれます。
胆汁については、公表2回で誤りと判定された記述が2つあります。これを突き合わせると答えが決まります。
| 公表回 | 誤りとされた記述 |
|---|---|
| 令和8年4月・問36 | 胆汁を酸性とし、酵素は持たないが脂肪を乳化させて分解を助ける、とした記述 |
| 令和7年10月・問39 | 胆汁をアルカリ性とし、トリプシンのように蛋白質を分解する酵素を持っている、とした記述 |
1つめは「酸性」の部分が、2つめは「消化酵素を含む」の部分が引っかかっています。2つの誤りが指している方向を合わせると、胆汁は「アルカリ性」で「消化酵素を含まない」ということになります。片方の回だけを見ていると判断できませんが、2回分を並べると確定します。
蛋白質については、令和7年10月公表の問38でまとまって出ました。
- 蛋白質はおよそ20種類のアミノ酸がつながってできていて、内臓・筋肉・皮膚といった体そのものを作る主成分になる
- 血液に乗って運ばれたアミノ酸は、それぞれの組織でもう一度蛋白質に組み立て直される
- 肝臓は、アミノ酸を材料にして血漿蛋白質を作る
- 食べていない状態が続くと、肝臓などがアミノ酸などをもとにブドウ糖を作り出す(糖新生)
このとき誤りとされたのは、蛋白質を膵リパーゼという酵素がアミノ酸まで分解する、とした記述です。酵素の名前だけを入れ替えるという作り方で、蛋白質を分解する酵素として公表問題に出てきているのはペプシンとトリプシンです。
肝臓のはたらきも、令和8年4月公表の問38で確定しています。コレステロールを作る/尿素を作る/血液に混じった有害な物質を分解する/グリコーゲンを作ったり分解したりするの4つです。誤りとされたのはヘモグロビンを作る、とした記述でした。肝臓は作る・分解する・ためる・解毒する係で、血の色素を作る係ではありません。
腎臓と尿|2回続けて同じ選択肢が正解だった
- 糸球体 → 原尿へこし出す
老廃物や電解質・水分が、糸球体からボウマン嚢へ。
- 尿細管 → 血液へ戻す
こし出された電解質・水分の大部分を再吸収する。
この節が扱う通常の働きでは、蛋白質はこし出されません。原尿の水分の大半がそのまま尿になるわけではありません。
腎臓・尿は2回とも出たうえに、2回とも正解になったのが同じ記述という珍しいテーマです。
原尿へこし出された電解質は、その大半が尿細管のところで血液へ戻される —— この内容の記述が、令和8年4月公表の問39と令和7年10月公表の問35で、どちらも正解になっています。同じ選択肢が2回続けて正解になったということです。この2回分の復習で確認したい1行と言っていい扱いです。
腎臓の流れは「糸球体でこして、尿細管で取り戻す」の2段階です。この2段階のどちらの話をしているかを入れ替えるのが、この範囲の定番の作り方です。公表2回で誤りと判定された記述を並べます。
| 誤りとされた記述 | どこがおかしいか |
|---|---|
| 血液中の蛋白質が糸球体からボウマン嚢へこされる、とした記述 | 蛋白質はこし出されない。だから健康なら尿に出てこない |
| 血液中の老廃物が尿細管からボウマン嚢へこされる、とした記述 | こす場所が違う。ボウマン嚢が受けるのは糸球体から |
| 原尿にこし出された水分はその大半がそのまま尿になる、とした記述 | 大半は再吸収される |
| 尿はふつう弱アルカリ性である、とした記述 | 「弱アルカリ性」の部分が誤り |
整理すると、糸球体でこし出されるのは老廃物や電解質・水分、こし出されないのは蛋白質、尿細管で血液に戻されるのが電解質と水分の大部分です。「こす場所は糸球体、戻す場所は尿細管」という2語の対応だけ間違えなければ、この4つの誤りはすべて見抜けます。
神経|中枢と末梢、交感と副交感
- 中枢神経系
脳と脊髄から成る。
- 末梢神経系
体性神経と自律神経に分かれる。
- 感覚神経 → 中枢へ
体性神経の一つ。感覚器が受け取った情報を運ぶ。
- 運動神経 → 運動器官へ
体性神経の一つ。中枢が出した命令を届ける。
感覚神経と運動神経は、末梢神経系のうち体性神経の分類です。交感・副交感神経の働きは本文の別の表で確認できます。
神経系も2回とも出たテーマです。まず大きな枠から。
| 分け方 | 中身 |
|---|---|
| 中枢神経系 | 脳と脊髄から成る |
| 末梢神経系 | 体性神経と自律神経。体性神経はさらに2つに分かれ、感覚器が受け取った情報を中枢へ運ぶのが感覚神経、中枢の出した命令を運動器官へ届けるのが運動神経 |
この2つに大別される、という点も、中枢神経系が脳と脊髄から成るという点も、公表問題で確定しています。
神経系をつくる基本の単位が神経細胞で、ニューロンとも呼ばれます。かたちは、ふつう細胞体が1個、軸索が1本、樹状突起が複数です。数がそれぞれ違うので、ここも入れ替えの材料にされます。
伝わる速さについては、有髄神経線維のほうが無髄神経線維より速いことが確定しています。
大脳については、外側にある皮質が感覚や思考などを受け持つ中枢としてはたらく、というのが正しい記述です。令和7年10月公表では、内側の髄質のほうが感覚・運動・思考の中枢だとした記述が誤りと判定されました。外側か内側かを入れ替えるだけの作り方なので、「大脳は外側が主役」と1語で覚えておきます。
自律神経は、次の対応で確定しています。
| 公表問題で確定していること | |
|---|---|
| 交感神経 | 心拍数を増やす/消化管の動きを抑える |
| 副交感神経 | 同じ器官に分布していても、交感神経とはほぼ逆向きに作用する |
公表問題は副交感神経のはたらきを個別には書いていませんが、両者が同じ器官に届いていても作用はほぼ逆になるという記述が正しいものとして確定しています。ですから交感神経側さえ覚えれば、副交感神経は裏返せば済みます。交感神経=体を動かすときのモードと押さえると、心拍を上げて消化を止める、という組合せが自然につながります。
なお、令和8年4月公表の問37では、神経細胞の細胞体が集まった場所の呼び名を、中枢神経系と末梢神経系で入れ替えた記述が誤りと判定されています。呼び名が2つあってどちらがどちらか、という形で問われた例です。
ホルモン|一覧表にすれば一気に片づく
令和7年10月公表の問37は、ホルモン名 × 内分泌器官 × はたらきという3点セットの組合せ問題でした。複数の対応関係を同時に判断する形式です。表にしてしまえば整理できます。
| ホルモン | 内分泌器官 | はたらき |
|---|---|---|
| コルチゾール | 副腎皮質 | 血糖量の増加 |
| アルドステロン | 副腎皮質 | 体液の塩類バランスを整える |
| インスリン | 膵臓 | 血糖量の減少 |
| グルカゴン | 膵臓 | 血糖量の増加 |
| 甲状腺ホルモン | 甲状腺 | 代謝を高め、体温を上げる |
上の4つは問37で正しい組合せとして確定したもの、いちばん下は令和7年10月公表の問43で正しい記述として確定したものです。
この表の読み方には、覚える手間を減らすコツが3つあります。
- 器官は2つずつセットになっている …… 副腎皮質から2つ、膵臓から2つ。出どころが同じでもはたらきは違うので、器官だけ覚えても組合せ問題は解けません
- 血糖を下げるのはインスリンだけ …… 表には血糖にかかわるホルモンが3つありますが、コルチゾールとグルカゴンは上げる側で、下げるのはインスリンだけです。下げる側が少数派と覚えると、1つだけ抜き出せます
- 同じ器官から出る2つは、はたらきの毛色が違う …… 副腎皮質のコルチゾールは血糖、アルドステロンは塩類。膵臓の2つはどちらも血糖ですが向きが逆。「同じ/違う」の型で覚えると、入れ替えに気づけます
この問題で誤りと判定された組合せは、メラトニンを副甲状腺から出るホルモンとし、そのはたらきを体液のカルシウムの調節とした3点セットでした。3つのうちどこがずれているのかまでは公表問題に書かれていないので、この記事では正しい対応を推測して書くことはしません。この組合せが誤りだったという事実だけ覚えておいてください。
ホルモンはストレスの問題でも出ます。ストレスを受けたときに体と心に出る反応には、カテコールアミン(ノルアドレナリンやアドレナリンがこれにあたります)と副腎皮質から出るホルモンが大きく関わっている、というのが確定した記述です。
感覚器|目の数値はそのまま出る
視覚は数値がそのまま問われる、労働生理では珍しい範囲です。公表問題で確定しているものを並べます。
| 論点 | 確定していること |
|---|---|
| 網膜 | 錐状体は色を感じ、杆状体は明暗を感じる |
| 遠見視力の検査 | 一般に5mの距離で実施する |
| 乱視 | 角膜がゆがんでいたり表面に凹凸があるため、眼軸などに異常がなくても像が網膜上に正しく結ばれないもの |
| 視野 | 上方と鼻側が約60度、下方が約70度、耳側が約100度 |
| 暗順応 | 明るい場所からいきなり暗い場所へ移ると最初は見えにくく、しばらくすると見えてくること |
錐状体と杆状体は、暗いところで色が分かりにくくなることを思い出せば向きを間違えません。暗い場所では明暗担当の杆状体だけが働いているからです。視野の3つの数字は、鼻がある内側がいちばん狭くて60度、じゃまがない耳側がいちばん広くて100度という理屈で並べられます。
感覚器では、誤りと判定された記述のほうが役に立つことがあります。令和8年4月公表の問35と問41、問44で誤りとされたものを挙げます。
- 刺激の強さと、人が感じ取る感覚の強さは比例して直線的に増える、とした記述 → 誤り
- 冷たさを受け持つ冷覚点は、ほかの感覚点よりも密に並んでいる、とした記述 → 誤り
- 内臓の感覚は、どこが痛むかまで細かく分かる鋭い感覚だ、とした記述 → 誤り
- 平衡感覚にかかわる前庭と半規管が中耳にある、とした記述 → 誤り(体の傾きや回転を知覚する器官だという部分ではなく、中耳という場所のほうが違うと判定されました)
- 目を使う作業を続けたときの疲れを、硝子体の厚みを調節する際の毛様体筋の緊張などで説明した記述 → 誤り(厚みを調節される対象が違います)
- 老人性難聴は1000Hzを下回るほうの音から聞こえにくくなる、とした記述 → 誤り
最後の3つは、正しい答えが公表問題に書かれていません。この記事では推測で埋めず、「この記述は誤りとされた」という事実だけを載せます。試験で同じ記述が出れば、それが誤りだと判断できれば足ります。
体温調節・筋肉・免疫|数字と言い換えが狙われる
体温調節は2回とも出ました。確定している内容です。
- 体温調節中枢は間脳の視床下部にある
- まわりの条件が変わっても体の内側の状態をそろえて保つ性質。これを恒常性(ホメオスタシス)という
- 計算上、体重70kgの人の体表面から水分が100g蒸発すると、気化熱が奪われて体温がおよそ1℃下がる
- 寒いところでは皮膚の血管が縮んで流れる血液の量が減り、逃げていく熱が少なくなる
- 甲状腺ホルモンが出ると代謝が高まり、体温は上がる
いっぽう誤りとされたのは、体温調節中枢を小脳だとした記述(場所の入れ替え)、この性質を「同調性」と呼ぶとした記述(用語の言い換え)、寒い環境で皮膚の血管が広がって血の流れが増し、皮膚の温度が上がるとした記述(向きの逆転)、そして発汗と不感蒸泄の意味を取り違えて説明した記述(定義のすり替え)です。場所・用語・向き・定義の4通りの崩し方が1つのテーマに全部入っている、と見ておくと構えられます。
筋肉(令和7年10月公表・問42)で確定しているのは次の4つです。
- 意識とは関係なく決まった形で起こる反応を反射と呼び、その最も単純な例が膝蓋腱反射などの伸張反射
- 筋肉の出せる最大の力は、断面積あたりでならして比べると、男女差も年齢差もほとんどない
- 体を動かし続けることで筋肉が太くなること。これを筋肉の活動性肥大という
- 荷物を持ち上げる、ひざを曲げ伸ばしするといった関節を動かす動作で、その筋肉に起きているのは等張性収縮
誤りとされたのは、筋肉のグリコーゲンについて、酸素が足りている状態なら最後まで分解されて乳酸ができる、とした記述でした。
免疫(令和8年4月公表・問43)では、次の4つが確定しています。
- 抗原とは、免疫を担う細胞がよそ者だと判断する物質のこと
- 抗原になりうる物質としては、蛋白質や糖質などが挙げられている
- 抗原を排除するはずの免疫が、かえって自分の組織や細胞を傷めてしまう状態がアレルギー。代表的な病気に気管支ぜんそくやアトピー性皮膚炎がある
- 好中球は白血球の仲間で、偽足を出してアメーバのように動き、侵入した細菌を取り込んで処理する
ここで誤りとされたのは、体液性免疫と細胞性免疫の説明を入れ替えた記述です。名前が似た2語を交換するという、この記事で扱った問題でも確認できます。
ストレス(令和7年10月公表・問44)では、昇進・転勤・配置替えも、職場の騒音・気温・湿度・悪臭も原因になりうること、そして自律神経と内分泌のつりあいが崩れて、精神神経科の病気や内科の病気につながる場合があることが確定しています。誤りとされたのは、外からの刺激であるストレッサーは、形や強さに関係なく心身のはたらきを押さえつける、とした記述でした。
加齢による変化(令和8年4月公表・問44)では、次の4つが正しい記述として確定しています。動くものを目で追う力が衰える/体温を調節する力が落ちて熱中症になりやすくなる/骨の密度が減り筋力も落ちて骨折しやすくなる/体のバランスを取る感覚が鈍って転びやすくなる。
「どっちがどっち」で落とす組合せ一覧
ここまでに出てきた、入れ替えられて出題されたペアだけを集めます。労働生理で失点するのは、知らなかったからではなく2つの言葉の向きを取り違えたからという場合がほとんどです。
| 迷うペア | 公表問題で確定している向き |
|---|---|
| 体循環 / 肺循環 | 体循環は左心室から出て右心房へ、肺循環は右心室から出て左心房へ |
| 肺動脈 / 肺静脈 | 右心室から出るのが肺動脈、肺から左心房へ戻るのが肺静脈 |
| 動脈血 / 静脈血 | 肺動脈を流れるのは静脈血。血管の名前は出入りの向きで決まる |
| 赤血球の約60% / 好中球の約60% | 約60%は好中球が白血球に占める割合。赤血球で約60%は誤り |
| 赤血球 / 白血球(ABO式) | ABO式は赤血球の分類 |
| 糸球体 / 尿細管 | 糸球体でこす、尿細管で血液に戻す |
| こされる / こされない | 蛋白質はこし出されない。電解質と水分はこされたあと大部分が再吸収される |
| 中枢神経系 / 末梢神経系 | 中枢神経系は脳と脊髄。細胞体が集まる場所の呼び名は入れ替えて出題された |
| 大脳の皮質 / 髄質 | 感覚や思考の中枢は外側の皮質 |
| 交感神経 / 副交感神経 | 交感神経は心拍数を増やし消化管の運動を抑える。副交感神経はほぼ正反対 |
| インスリン / グルカゴン | どちらも膵臓。インスリンが下げる、グルカゴンが上げる |
| コルチゾール / アルドステロン | どちらも副腎皮質。コルチゾールが血糖、アルドステロンが塩類 |
| ペプシノーゲン / ペプシン | 「ゲン」が付くほうが手前。胃酸でペプシンになって蛋白質を分解 |
| フィブリノーゲン / フィブリン | 同じく「ゲン」が付くほうが手前。フィブリンになって固まる |
| 胆汁 / 膵液 | 膵液はアルカリ性で酸を中和。胆汁はアルカリ性で消化酵素を含まない(誤り2件の突き合わせから) |
| 錐状体 / 杆状体 | 錐状体が色、杆状体が明暗 |
| 体液性免疫 / 細胞性免疫 | 説明を入れ替えた記述が誤りとされた |
| ホメオスタシス / 同調性 | 正しい用語は恒常性(ホメオスタシス) |
| 視床下部 / 小脳 | 体温調節中枢は間脳の視床下部 |
この表を上から下まで即答できるなら、労働生理10問はほぼ取れます。10問中8問が「誤っているものはどれか」型で、その誤りの多くがこの表のどこかを裏返して作られているからです。
この2回に出ていないテーマもある
正直に書いておきます。参考書の労働生理の章には載っているのに、今回確認した公表2回(令和8年4月・令和7年10月)には出ていないテーマがあります。
- 呼吸 …… 外呼吸と内呼吸の違い、呼吸中枢の場所、呼吸数など
- 睡眠 …… 睡眠と自律神経、睡眠にかかわるホルモンなど
- 基礎代謝率 …… 測定条件や、エネルギー代謝率の意味
- 脂肪の分解 …… どの酵素で何に分解されるか
- 心拍数や血圧の数値
この記事は公表問題で正解・不正解が確定した記述だけを根拠にしているので、これらは扱っていません。出ないという意味ではありません。労働生理は同じ引き出しから繰り返し出る科目ですが、引き出し自体はもっと多くあります。上に挙げたテーマは、手元の教材で一度は目を通しておいてください。
逆に言えば、この記事に書いた論点はすべて実際に出題され、正解か誤りかが公式に確定しているものです。まずここを固めてから、残りを埋めるのが早い順番です。
解いて確かめる
読んで分かった気になっても、この記事で確認した公表2回分では、労働生理の「誤っているものはどれか」型がそれぞれ8割でした。おかしな記述を見つける練習をしないと点になりません。
合格ドリルには、公表試験問題を根拠にした労働生理の練習問題が57問あります。1問ごとに、なぜその答えになるのかと、出典の問番号まで付けてあります。
- 第一種を受ける方 …… 衛生管理者 第一種 労働生理の練習問題
- 第二種を受ける方 …… 衛生管理者 第二種 労働生理の練習問題
この記事の冒頭で確かめたとおり、労働生理は第一種と第二種で同じ問題が出ています。どちらのページも中身は同じ57問なので、受ける区分のほうを開けば大丈夫です。
ほかの範囲もまとめて解きたい場合は、第一種のトップと第二種のトップから科目を選べます。どの科目にどれだけ時間を割くかは勉強のしかたを参照してください。
編集:合格ドリル運営者|作成と検証の手順は運営者情報に、 誤りを見つけた場合の訂正は訂正履歴で公開しています。
科目ごとに問題を解く
次にやること
衛生管理者 第一種のページに、ほかの解説記事もまとめています。