「力学に関する知識」10問の攻略
【捨てられません】
計算が出るせいで、いちばん先に「捨てていいか」を調べられる科目です。結論から書きます。捨てられません。この記事では、確認した公表問題の計算例と言葉で答える問題を分けて整理します。ここを1つずつ確認していきます。
最終確認:2026年8月18日 根拠:安全衛生技術試験協会「【公表試験問題】労働安全衛生法に基づく免許試験」・同協会「クレーン・デリック運転士・同協会「クレーン・デリック運転士〔クレーン限定〕の紹介」 ほか
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捨てられない理由は、足切りが科目ごとにあるから
科目ごとの得点が40%以上で、かつ、その合計が60%以上であること。
これが合格基準です。力学は10問20点なので、40%は8点、つまり10問中4問にあたります。
| 科目 | 配点 | 40%の点 | 必要な正解数 |
|---|---|---|---|
| クレーン及びデリックに関する知識 | 30点 | 12点 | 4問 |
| 関係法令 | 20点 | 8点 | 4問 |
| 原動機及び電気に関する知識 | 30点 | 12点 | 4問 |
| 力学に関する知識 | 20点 | 8点 | 4問 |
力学が3問以下だと、ほかの3科目が満点でも不合格です。「配点が小さいから捨てて他で稼ぐ」は制度として成り立ちません。
ただし裏返すと、目標は4問でよいということでもあります。10問全部を取りにいく必要はありません。この科目に時間を吸い取られると、1問3点の知識・原動機に手が回らなくなります。力学は足切りを確実に越える。点は他で作る。これが配点から見た形です。
実は、計算しない問題が半分ある
公表試験問題の力学10問(問31〜問40)を、計算が要るものと要らないものに分けます。
| 令和8年4月 | 令和7年10月 | |
|---|---|---|
| 計算しない問題 | 問31 力の性質 問33 質量と比重 問34 重心と安定 問36 摩擦の性質 問37 荷重の種類 (5問) | 問34 重心 問35 荷重の種類 (2問) |
| 計算する問題 | 問32 支点の力 問35 合成速度 問38 引張応力 問39 つり角度と張力 問40 滑車 (5問) | 問31 合力 問32 合成速度 問33 体積の式 問36 天びん棒 問37 摩擦 問38 つり角度 問39 引張応力 問40 滑車 (8問) |
回によって差はありますが、この記事で扱う公表問題には、言葉で答える問題があります。令和8年4月公表分は、計算をまったくしなくても5問取れる構成でした。その回では計算なしの問題だけでも4問以上ありましたが、本番の構成を保証するものではありません。
そのうえで、計算のほうも型は決まっています。次から1つずつ解いていきます。
計算の入口はいつも同じ。kgをNに直す
力学の計算は、ほぼ全部がここから始まります。
物体の重さ(N)= 質量(kg)× 重力の加速度(9.8m/s2)
この記事で扱う問題には「重力の加速度は9.8m/s2とする」という条件があります。計算では、問題文に示された値と単位を確認します。
| 質量 | 重さ |
|---|---|
| 10kg | 98N |
| 100kg | 980N |
| 1t(1,000kg) | 9,800N = 9.8kN |
| 6t | 58,800N = 58.8kN |
よくある失敗は、kgのまま計算してしまうことです。たとえば摩擦の問題で「100kg×0.6=60」としてしまうと、選択肢に用意された「60N」という誤答をそのまま選ぶことになります。まずNに直す。それから何かを掛けたり割ったりする。この順を崩さないでください。
なお、答えの選び方は「最も近いものはどれか」という聞き方です。細かい端数まで合わせる必要はありません。
型1:引張応力=力÷断面積
- 荷:kg → N
質量に、問題文の重力の加速度を掛けて力に直す。
- 棒:直径 → 半径 → 断面積
cmをmmへ直し、半径を使って丸棒の断面積を出す。
- 力 ÷ 断面積 → 応力
Nをmm²で割る。本文の2例を同じ順番で解く。
直径を半径として計算しないこと。本文では直径が2倍なら、断面積は4倍、応力は4分の1になることも確かめています。
2回とも出ています。丸棒の先に荷をつり下げて、棒に生じる引張応力を求める形です。
令和8年4月公表分の問38:直径1cmの丸棒に、質量100kgの荷。
- ① 荷の重さ …
100 × 9.8 = 980N - ② 断面積 … 直径1cm=10mm なので半径は5mm。
3.14 × 5 × 5 = 78.5mm2 - ③ 応力 …
980 ÷ 78.5 = 12.4…→ 最も近いのは12N/mm2
令和7年10月公表分の問39:直径2cmの丸棒に、質量100kgの荷。
- ① 荷の重さ … 980N(同じ)
- ② 断面積 … 直径2cm=20mm、半径10mm。
3.14 × 10 × 10 = 314mm2 - ③ 応力 …
980 ÷ 314 = 3.1…→ 最も近いのは3N/mm2
直径が2倍になると断面積は4倍、応力は4分の1になります。半径を使うことと、cmをmmに直すことの2点だけ気をつければ落としません。直径を半径と間違えると4倍ずれ、cmのまま計算すると100倍ずれます。どちらも選択肢に用意されています。
型2:摩擦力=垂直力×摩擦係数
最大静止摩擦力 F = 静止摩擦係数 μ × 接触面に作用する垂直力 N
令和7年10月公表分の問37:水平な床に置いた質量Wの物体を引っ張り、動き始める直前の力が588Nだった。静止摩擦係数は0.6。Wはいくらか。
- ① 垂直力を出す …
588 ÷ 0.6 = 980N - ② 質量に戻す …
980 ÷ 9.8 = 100kg
逆向き(質量から力を求める)でも同じです。100kgなら 100 × 9.8 × 0.6 = 588N。
令和8年4月公表分の問36では、この式を「F=μ/N」と割り算にした選択肢が誤りとして出ていました。掛け算です。式そのものを問う出し方もあると覚えておいてください。
言葉のほうもよく出ます。
- 運動摩擦力は最大静止摩擦力より小さい(動き出すときがいちばん重い)
- 転がり摩擦力は滑り摩擦力より小さい(丸い棒を敷くと楽に動く)
- 床の上で静止している物体は、引っ張るなどの力を加えなければ静止摩擦力は働かない
型3:モーメントのつり合い(支点と垂線の長さを確認)
距離と力で、てこのつり合いを考える
棒の重さを無視した例です。支点から1mに30kg、反対側の1.5mに20kgをつると、左右のモーメントは同じになります。支える力は合計の重さ490Nです。
図を拡大する +「支点が支える力」「天びん棒」はどちらもこれです。式は1つだけ覚えます。
力のモーメント M = 力の大きさ F × 回転軸の中心から力の作用線に下ろした垂線の長さ L
令和8年4月公表分の問31では、これを「M=F/L」と割り算にした選択肢が誤りとして出ました。掛け算です。
例1:天びん棒(令和7年10月公表分の問36)
棒を支える点があり、片側1mの位置に荷W、反対側1.5mの位置に20kgの荷がつり下がってつり合っています。棒を支える力Fを求めます。
- ① 支点の左右でモーメントが等しい …
W × 1 = 20 × 1.5 - ② よって
W = 30kg - ③ 支える力は両方の荷の重さの合計 …
(30 + 20) × 9.8 = 490N
公表問題の正答も490Nでした。モーメントで片方の質量を出し、最後に合計してNに直すという2段構えです。
例2:天井クレーンの支点が支える力(令和8年4月公表分の問32)
支点AとBの間隔が13m、荷(質量6t)はAから8mの位置。Bの支点が支える力を求めます。
- ① 荷の重さ …
6,000 × 9.8 = 58,800N = 58.8kN - ② Aを回転の中心と考える。Bが支える力を FB とすると
FB × 13 = 58.8 × 8 - ③
FB = 470.4 ÷ 13 = 36.1…→ 最も近いのは36kN
公表問題の正答も36kNでした。検算もしておきます。Aが支える力は 58.8 - 36.2 = 22.6kN。荷はBのほうに近い(Bから5m、Aから8m)ので、Bのほうが大きい。つじつまが合っています。
この型のコツは3つです。①遠いほうの支点を回転の中心にする(そうすると求めたい力だけが残る)。②掛ける距離は、中心から荷までの距離。③最後に「荷に近い支点のほうが大きいか」で検算する。この3つで、図の形が変わっても解けます。
型4:つり角度が開くほど張力は大きくなる
2本のワイヤロープで荷をつるとき、1本にかかる力(張力)は荷の重さの半分よりも大きくなります。ロープが斜めになるぶん、上向きに効く割合が減るからです。
令和7年10月公表分の問38:質量10kgの荷を、同じ長さの2本のロープでそれぞれ鉛直線に対して30°の角度で支えている。1人が引く力は。
- ① 荷の重さ …
10 × 9.8 = 98N - ② 1本の張力Tのうち、上向きに効くのは
T × cos30° = T × 0.866 - ③ 2本で支えるので
T × 0.866 × 2 = 98 - ④
T = 98 ÷ 1.732 = 56.6…→ 最も近いのは57N
正答も57Nでした。単純に半分の49Nとすると誤答の選択肢にはまります。
角度と張力の関係を数字で持っておく
2本のロープの間の角(つり角度)ごとに、「半分ずつ支えた場合の何倍になるか」を計算しておくと速く解けます。
| つり角度 | 倍率 | 意味 |
|---|---|---|
| 0°(真上に平行) | 1.00 | ちょうど半分ずつ |
| 60° | 約1.16 | 16%増し |
| 90° | 約1.41 | 4割増し |
| 120° | 2.00 | 1本で荷の全重量ぶん |
令和8年4月公表分の問39は、この性質を使って3つの荷を比べさせる問題でした。60°で4t・90°で3t・120°で2tの3通りです。順に計算してみます。
- 60°・4t …
4 × 9.8 ÷ 2 × 1.16 = 約22.6kN - 90°・3t …
3 × 9.8 ÷ 2 × 1.41 = 約20.8kN - 120°・2t …
2 × 9.8 ÷ 2 × 2.00 = 約19.6kN
荷は4t → 3t → 2tと軽くなっていくのに、1本にかかる力は22.6 → 20.8 → 19.6kNとしか減っていません。角度が開いたぶんが食いつぶしているからです。軽い荷でも角度を開けば危ないというのが、この問題が伝えている中身です。
型5:合成速度は三平方の定理
走行と横行を同時に動かすと、つり荷は斜めに動きます。走行と横行は直角なので、直角三角形の斜辺を求めるだけです。
令和8年4月公表分の問35:走行は5秒間に4m、横行は5秒間に3m。つり荷が10秒間に移動する距離は。
- ① 5秒間の移動距離 …
4と3の直角三角形の斜辺 = 5m - ② 10秒間なら …
5 × 2 = 10m
正答は10mでした。令和7年10月公表分の問32は「10秒間に8mと6m」で、斜辺が10m、答えも10mです。
数字は3・4・5か6・8・10で作られています。どちらも小学校で習う直角三角形の組です。ルートの計算は要りません。「4と3が来たら5」「8と6が来たら10」と反射で出るようにしておけば、10秒後を聞かれているのか5秒後を聞かれているのかだけ注意すれば取れます。
型6:滑車は「荷を支えているロープの本数」で割る
- 定滑車 → 向きを変える
必要な力の大きさは変わらない。
- 動滑車 → 荷と一緒に動く
荷を支えるロープが増え、その本数に応じて力が小さくなる。
- 計算 → 荷の重さ ÷ 支える本数
本文の例では、2本で支えるので荷の重さを2で割る。
滑車・ワイヤロープの質量と摩擦を考えない、という本文の問題条件での整理です。
2回とも問40は滑車でした。図の中の滑車の組み方を見て、力Fを求める式が正しいかどうかを判断させる形です。
| 滑車 | 働き |
|---|---|
| 定滑車 | 力の向きを変えるだけ。必要な力の大きさは変わらない |
| 動滑車 | 荷といっしょに動く。荷を支えるロープの本数が増え、その本数ぶん力が小さくなる |
必要な力 F = 荷の重さ ÷ 荷を支えているロープの本数
たとえば動滑車を1個使い、荷が2本のロープで支えられている形なら、質量100kgの荷に必要な力は 100 × 9.8 ÷ 2 = 490N です。
公表問題の選択肢には F=Wg、F=Wg÷2、F=Wg÷3、F=Wg÷4、F=Wg÷5 といった式が並びます。図で「荷をぶら下げているロープが何本あるか」を数えるだけで、正しい式かどうかが判定できます。滑車の個数ではなく、支えているロープの本数です。
なお、どの問題にも「滑車及びワイヤロープの質量並びに摩擦は考えない」という条件が付いています。
型7:質量・体積・比重
質量 W = 体積 V × 単位体積当たりの質量 d
体積の求め方は、荷の形ごとに決まっています。
| 形 | 体積 |
|---|---|
| 直方体 | 縦 × 横 × 高さ |
| 円柱 | 3.14 × 半径 × 半径 × 高さ |
| 円錐 | 3.14 × 半径 × 半径 × 高さ ÷ 3 |
| 球 | 4 ÷ 3 × 3.14 × 半径 × 半径 × 半径 |
令和7年10月公表分の問33は、この体積の式が正しいかどうかを選ばせる問題でした。
3辺が半分になると質量はどうなるか
令和8年4月公表分の問33には、立方体の縦・横・高さが3辺とも2分の1になったとき、質量は「4分の1になる」という選択肢がありました。これが誤りです。
- 体積は
1/2 × 1/2 × 1/2 = 8分の1 - 同じ材料なので、質量も8分の1
比重は、その物体の質量と、同じ体積の4℃の純水の質量との比です。単位はありません。公表問題で問われた大小関係を挙げます。
- 鋼の比重は銅の比重より小さい
- 大きい順に並べると 鉛 → 鋳鉄 → アルミニウム → 木材
計算しない5問で足切りを越える
ここまでが計算です。最後に、計算なしで取れるところをまとめます。その回では計算なしの問題だけでも4問以上ありましたが、本番の構成を保証するものではありません。
1. 力の性質
- 力の三要素は大きさ・向き・作用点
- 多数の力が一点に作用してつり合っているとき、合力は0
- 力を作用線の上で動かしても効果は変わらないが、作用線から外れた位置に移すと効果が変わる
- 一直線上で互いに逆を向く2つの力の合力は、2つの大きさの差
2. 重心と安定
- 重心は、各部分に働く重力の合力の作用点
- 円柱の重心は、上下の底面の円の中心を結んだ線分の中点
- 形によっては、重心が物体の外にあることもある(ドーナツ形など)
- 直方体は、置き方を変えて重心が高くなるほど不安定になる
- 傾けたとき、重心からの鉛直線が底面を通っていれば元に戻る。底面から外れると倒れる
最後の1つは要注意です。令和8年4月公表分の問34では、「鉛直線が底面を通るときは倒れる」という逆向きの選択肢が誤りとして出ました。底面の内側に落ちていれば戻ります。
3. 荷重の種類
| 静荷重 | 大きさも向きも変わらない |
|---|---|
| 片振り荷重 | 向きは同じで、大きさだけが時間とともに変わる |
| 両振り荷重 | 向きも大きさも時間とともに変わる |
| 衝撃荷重 | 急激に加わる。巻き下げ中の急制動で玉掛け用ワイヤロープにかかる |
部材ごとにかかる荷重も決まっています。
- クレーンガーダ … 曲げ荷重(両端で支えられた橋なので、たわむ向きに力を受ける)
- シーブを通る巻上げ用ワイヤロープ … 引張荷重と曲げ荷重
- フック … 引張荷重と曲げ荷重
「ガーダには主に引張荷重がかかる」という選択肢が誤りとして出たことがあります。ガーダは曲げです。
限定なしでもクレーン限定でも、力学は同じ
令和8年4月公表分の「限定なし」と「クレーン限定」を問31から問40まで並べたところ、力学10問はすべて同じ問題でした。デリックの有無は力学に関係ありません。
つまりこの記事の内容は、どちらの区分を受ける方にもそのまま当てはまります。受験者数の多い〔クレーン限定〕(令和7年度の学科17,550人)の方も、限定なし(946人)の方も、力学で覚えることは変わりません。
さらに、力学は移動式クレーン運転士や揚貨装置運転士を先に持っていると免除される科目でもあります。手元の免許証を確認してみてください。逆に、この試験で力学に合格しておけば、次に移動式クレーン運転士を受けるときに免除されます。詳しくはクレーン運転士と移動式クレーン運転士の違いにまとめてあります。
この科目の問題を解く
計算は、読むだけでは身につきません。手を動かして、数字を1回ずつ通すのがいちばん近道です。
クレーン限定で受ける方はこちらです。中身は同じなので、両方を通しで解いても構いません。
全問に、なぜその答えになるかの筋道が付いています。まちがえた型だけを繰り返してください。ほかの科目はクレーン及びデリックに関する知識・原動機及び電気・関係法令にまとめています。
編集:合格ドリル運営者|作成と検証の手順は運営者情報に、 誤りを見つけた場合の訂正は訂正履歴で公開しています。
科目ごとに問題を解く
次にやること
クレーン・デリック運転士 限定なしのページに、ほかの解説記事もまとめています。