丙種「危険物の性質」
10問の攻略
「どこまで覚えればいいのか」がいちばん分かりにくい科目です。答えは条文にあります。丙種が扱える危険物の分だけです。
最終確認:2026年8月18日 根拠:消防試験研究センター「過去に出題された問題」丙種・危険物の規制に関する規則・消防法 ほか
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覚える範囲は、条文で区切られています
この科目の正式名称は「危険物の性質並びにその火災予防及び消火の方法」で、丙種では10問出ます。乙4にも同じ名前の科目があるので、乙4のテキストをそのまま使ってしまいがちですが、中身の定義が違います。
危険物の規制に関する規則 第55条は、この科目の細目をそれぞれこう定めています。
| 乙種(第55条第2項第2号) | 丙種(第55条第3項第2号) |
|---|---|
| イ すべての種類の危険物の性質に関する基礎的な概論 ロ 受験に係る類の危険物に共通する特性 ハ 受験に係る類に共通する火災予防及び消火の方法 ニ 受験に係る類の品名ごとの一般性質 ホ 受験に係る類の品名ごとの火災予防及び消火の方法 | イ 丙種危険物取扱者の取り扱うことができる危険物の性質に関する基礎知識 ロ 丙種危険物取扱者の取り扱うことができる危険物の火災予防及び消火の方法 |
乙種にある「すべての種類の危険物の性質に関する概論」(第1類〜第6類の全体像)が、丙種にはありません。丙種の科目は2項目とも「丙種が取り扱うことができる危険物」に限定されています。これが「丙種でどこまで覚えるか」への、いちばん確かな答えです。
そして、その範囲は規則 第49条で決まっています。
丙種危険物取扱者にあつてはガソリン、灯油、軽油、第三石油類(重油、潤滑油及び引火点百三十度以上のものに限る。)、第四石油類及び動植物油類とする。
覚えるのはこの6つです。第1類〜第3類・第5類・第6類の性質、特殊引火物、アルコール類、アセトン、ベンゼン、トルエン——乙4のテキストの物質表の大半は、丙種では優先度が下がります。
実際に出た10問を見ると、力の入れどころが分かります
消防試験研究センターが公表している丙種の過去問25問のうち、この科目にあたるのは問16〜問25です。
| 問 | テーマ | 問われた中身 |
|---|---|---|
| 16 | 共通する性状 | 丙種の危険物は「無色無臭」ではない |
| 17 | 消火器の適否 | 灯油に霧状の水を放射する消火器は不適 |
| 18 | 給油取扱所の実務 | 専用タンク・地下配管の腐食を早く見つける現象 |
| 19 | 消火 | 燃えているガソリンに水をかけると危険な理由 |
| 20 | 火災予防 | 容器のふたを開放したままは不適切 |
| 21 | 灯油 | 灯油は電気の不良導体 |
| 22 | 軽油 | 不完全燃焼で一酸化炭素などの有毒ガス |
| 23 | 重油 | 「比重は1より大きく、水に溶ける」は誤り |
| 24 | 動植物油類 | 乾性油のしみた布を積むと自然発火のおそれ |
| 25 | 第三石油類 | 水に溶けるものと溶けないものがある |
10問のうち5問(21〜25)が品目ごとの性状、3問(17・19・20)が火災予防と消火、1問が共通性状、1問がガソリンスタンドの実務でした。品目ごとの性状に半分が割かれているので、まずそこを固めます。
6つの品目を、表で比べて覚える
数値は厚生労働省「職場のあんぜんサイト」のGHSモデルSDSの値です。ガソリン・灯油・軽油は単一の化合物ではなく混合物なので幅があり、資料によって数値が違います。試験で問われるのは細かい数字そのものではなく、品目どうしの上下関係です。
| 品目 | 区分 | 引火点 | 発火点 | 比重 | 見た目 |
|---|---|---|---|---|---|
| ガソリン | 第一石油類 | −45℃ | 約300℃ | 0.72〜0.76 | オレンジ系に着色 |
| 灯油 | 第二石油類 | 37〜65℃ | 220〜254℃ | 0.8 | ほぼ無色〜淡黄色 |
| 軽油 | 第二石油類 | 21〜55℃ | 177〜329℃ | 0.84 | — |
| 重油 | 第三石油類 | 条文上は引火点70℃以上200℃未満 | 1より小さい | 褐色〜暗褐色 | |
| 第四石油類 | — | 条文上は引火点200℃以上250℃未満 | 1より小さい | ギヤー油・シリンダー油など | |
| 動植物油類 | — | 条文上は引火点250℃未満 | 1より小さい | — | |
区分の境目になる温度は、消防法 別表第一の備考にそのまま書いてあります。21℃未満が第一石油類、21〜70℃未満が第二石油類、70〜200℃未満が第三石油類、200〜250℃未満が第四石油類、動植物油類は250℃未満。この5つの数字だけ覚えれば、品目名から区分を出せます。
丙種の範囲はガソリンだけが引火点マイナスで、あとは全部プラスです。ここが最大の分かれ目で、ガソリンは真冬でも燃える蒸気を出している/灯油以降は常温ではそのまま火が付きにくいという差になります。
公表問題 問21は「灯油は20℃で引火の危険性がある」を誤りとして出しています。灯油の引火点は37℃以上なので、常温のままでは引火しません。ただし霧にしたり布にしみ込ませたりすると引火点より低い温度でも引火します。「引火点が高い=安全」ではない点は、繰り返し問われるところです。
図解で確認:第4類の7区分は「引火点」で並ぶ
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図解の参考:消防法別表第一 備考第11号〜第15号(図解追加:2026年9月10日)
共通する性状は4つ。「無色無臭」は入りません
公表問題 問16は「丙種危険物取扱者が取り扱うことのできる危険物に共通する一般的な性状」を聞いています。妥当でないものとして選ばれるのが「無色無臭である」です。
正しい記述として並んでいたのは、次の3つでした。
- 可燃性である
- 20℃では液体である(第4類はすべて引火性液体です)
- 発火点は100℃よりも高い(丙種の範囲では、いちばん低い軽油でも177℃以上)
これに加えて、丙種でよく問われる共通の性状が2つあります。
| 性状 | 基準 | 結果として起きること |
|---|---|---|
| 比重は1より小さい | 水=1 | 水に浮く。燃えたまま流れて火災面が広がる |
| 蒸気比重は1より大きい | 空気=1 | 蒸気が低いところにたまる。離れた火気まで届いて引火する |
公表問題 問21では「灯油の蒸気比重は1より小さい」が誤りとして出ています。第4類の蒸気は空気より重い——これが後で出てくる「換気は低所で」の理由になります。
もうひとつ、丙種で必ず押さえるのが電気の不良導体であるという性状です。電気を通しにくいので、流れたときに生じた静電気が逃げずにたまります。問21の正解はこの選択肢でした。だから接地(アース)が要る、という話につながります。
図解で確認:比重が1より小さい液体は水に浮く
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図解の参考:消防試験研究センター「過去に出題された問題」丙種 問19(図解追加:2026年9月10日)
品目ごとに、公表問題で狙われた点
灯油と軽油は、どちらも第二石油類でよく似ています。だからこそ入れ替えて出されます。
- 家庭用暖房燃料やジェット燃料に使われるのは灯油。軽油をそう書いた選択肢は誤りです(問22)
- 原油を蒸留すると、沸点の低いものから先に出ます。ガソリンのほうが軽油より先です。「軽油はガソリンより先に得られる」は誤りでした(問22)
- 軽油は不完全燃焼で一酸化炭素などの有毒ガスを発生します(問22の正解)
- 灯油は電気の不良導体で、水にはあらゆる割合で混ざったりしません(問21)
重油は、公表問題 問23で「妥当でないもの」として「比重は1より大きく、水に溶ける」が置かれました。重油も他の第4類と同じで水より軽く、水に溶けません。正しい記述として出ていたのは「一般に褐色または暗褐色の液体」「引火点はガソリンよりも高い」「液温が高くなると引火の危険性が大きくなる」の3つです。
動植物油類で問われるのは自然発火です(問24)。
乾性油がしみ込んだ布を積み重ねて放置すると、酸化熱がたまって自然発火することがあります。引火点は250℃未満と高く、火を近づけても常温では燃えないのに、火の気がなくても燃え出す——この「引火はしにくいのに自然発火する」というねじれが、丙種でわざわざ問われる理由です。
対策は、油のしみた布を積み重ねて放置しないこと。広げて乾かすか、密閉した金属容器に入れます。なお同じ問24で、「動植物油類の引火点はガソリンより高く灯油より低い」は誤りでした。灯油(37℃以上)よりずっと高いのが正解です。
第三石油類については、問25で「水に溶けるものと溶けないものがある」が正しい記述として出ています。第三石油類には水に溶けるものもあるためです(危険物の規制に関する政令 別表第三にも、第三石油類の「非水溶性液体 2,000L」と「水溶性液体 4,000L」の両方の欄があります)。ただし丙種が扱えるのは第三石油類のうち重油・潤滑油・引火点130℃以上のものに限られており(規則 第49条)、そのなかで実際に扱う重油は水に溶けません。
図解で確認:乾性油のぼろ布は「積むと自然発火」
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図解の参考:消防試験研究センター「過去に出題された問題」丙種 問24(図解追加:2026年9月10日)
図解で確認:灯油・軽油は「霧状にすると」引火点より低くても燃える
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図解の参考:消防試験研究センター「過去に出題された問題」丙種 問21(図解追加:2026年9月10日)
図解で確認:原油の蒸留は「ガソリン → 灯油 → 軽油 → 重油」の順
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図解の参考:消防試験研究センター「過去に出題された問題」丙種 問22(図解追加:2026年9月10日)
火災予防は「密栓・低所換気・接地」の3つ
公表問題 問20は、引火性液体を扱うときの注意事項で妥当でないものを選ばせる形でした。誤りは「室内では、危険物の容器は、ふたを開放した状態にしておく」です。
正しい記述として並んでいた3つが、そのまま丙種の火災予防の柱になります。
| やること | なぜ |
|---|---|
| 容器は密栓する | 蒸気を外に出さない。ふたを開けたままだと蒸気がたまって燃焼範囲に入ります |
| 室内は低所の換気を十分に行う | 第4類の蒸気は空気より重く、床・ピット・地下にたまるためです |
| 取扱機器を接地(アース)する | 電気の不良導体なので静電気が逃げず、放電火花が点火源になります |
よく混ざるのが「容器は密栓、場所は換気」です。どちらも密閉、どちらも開放、と覚えると必ず崩れます。容器は閉じる/部屋は開けると、逆の動作で覚えてください。
あわせて、容器は満杯にしません。液温が上がると膨張するので、上部に空間を残します。火気のある場所での詰替えもしません(問20の正しい選択肢)。
図解で確認:蒸気比重が1より大きい蒸気は低い所にたまる
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図解の参考:消防試験研究センター「過去に出題された問題」丙種 問21(図解追加:2026年9月10日)
図解で確認:容器は「密栓」、場所は「換気」
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図解の参考:消防試験研究センター「過去に出題された問題」乙種第4類 問27(図解追加:2026年9月10日)
消火は「水はだめ、霧状の水もだめ」まで覚える
ここが丙種で最も差が付くところです。公表問題では2問(問17・問19)が使われていました。
まずなぜ水がだめなのか。問19の正解は「ガソリンは水よりも軽いため水に浮き、燃焼面が広がるから」でした。誤りの選択肢は「水と混合して量が増える」「水が分解して揮発性ガスが出る」「有毒ガスが発生する」——いずれも理由の付け方が違います。比重が1より小さいから浮く、浮いたまま流されるから広がる。この一本道で覚えてください。
次にどの消火器なら使えるのか。問17は「灯油を取り扱う場所に設置することが不適切なもの」を選ばせる問題で、正解は「霧状の水を放射する消火器」でした。
| 丙種の危険物に適応する | 適応しない |
|---|---|
| 泡を放射する消火器 | 棒状の水を放射する消火器 |
| 粉末を放射する消火器(りん酸塩類等・炭酸水素塩類等) | 霧状の水を放射する消火器 |
| 二酸化炭素を放射する消火器 | 棒状の強化液を放射する消火器 |
| 霧状の強化液を放射する消火器 | 水バケツ・水槽 |
| ハロゲン化物を放射する消火器/乾燥砂 | 屋内消火栓設備・スプリンクラー設備 |
いちばん引っかかるのが強化液と水の非対称です。強化液は棒状は×・霧状は○ですが、水を放射する消火器は棒状も霧状も×(水噴霧消火設備は第4類に適応します)。「霧状にすれば何でも使える」と覚えていると、問17でそのまま失点します。この○×は危険物の規制に関する政令 別表第五の第4類の欄がもとになっています。
消火剤ごとの働きも整理しておきます。
| 消火剤 | 主な働き | 注意点 |
|---|---|---|
| 泡 | 窒息(液面を覆う) | 覆えなくなると再燃します |
| 粉末 | 抑制(連鎖反応を止める) | 冷却効果はほとんどない。高温が残っていると再燃します |
| 二酸化炭素 | 窒息(酸素濃度を下げる) | 同じ理屈で人も酸欠になる。狭い密閉空間では危険です |
| 乾燥砂 | 窒息(覆う) | 少量の漏えい時に有効 |
消火の4つの原理そのものは丙種「燃焼及び消火」5問の攻略で扱っています。この科目では「丙種の危険物に、どれが使えるか」のほうが問われます。
図解で確認:第4類の火災に「棒状の水」は使わない
図を拡大する +
図解の参考:消防試験研究センター「過去に出題された問題」乙種第4類 問30(図解追加:2026年9月10日)
図解で確認:漏えいは「安全確保・火気排除が先」、水溶性には「耐アルコール泡」
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図解の参考:ガソリンの漏えい時の措置はENEOS レギュラーガソリン SDS 第6項を参照(2026年9月20日確認)。泡消火剤の適否は本文の出典を参照。
ガソリンスタンドの実務が1問出ます
丙種にあって乙4にない、特徴的な出題があります。公表問題 問18です。
給油取扱所における様々な現象から、専用タンクや地下埋設配管の腐食を早期に発見することができる。次のうち、専用タンク等が腐食しているおそれが最も小さい現象はどれか。
正解は「移動タンク貯蔵所から専用タンクに危険物を注入している時に、通気管の先端から油臭がした」です。注入中に通気管から蒸気が出て油のにおいがするのは正常な動作で、腐食のサインではありません。
逆に、腐食・漏えいを疑う現象は次の3つでした。
- 漏えいを検知する管からタール状の物質が検出された
- 計算上の在庫量より、実際の在庫量のほうが少ない日が続いた
- 給油ノズルから出た危険物に水が混じっていた
考え方は単純です。「中身が減る」「外のものが入ってくる」は穴が開いているサイン。「注入中ににおう」は装置が働いているだけ。丙種はガソリンスタンドで働く人が多く受ける区分なので、こうした実務寄りの1問が入ります。
関連して、給油取扱所の取扱いの基準(政令 第27条第6項第1号)も一度読んでおくと、法令の科目でも効きます。自動車に給油するときは固定給油設備を使って直接給油する/自動車の原動機(エンジン)を停止させる/自動車が給油空地からはみ出たままでは給油しないなど、現場でやっていることがそのまま条文になっています。
図解で確認:給油取扱所:エンジン停止・固定給油設備・はみ出し禁止、漏えいのサインは「在庫の差」
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図解の参考:危険物の規制に関する政令第27条第6項第1号ロ(図解追加:2026年9月10日)
この10問は、表を作った人が強い科目です
最後に、この科目でやることをまとめます。
- 6品目の表を1枚作る……ガソリン/灯油/軽油/重油/第四石油類/動植物油類。列は引火点・比重・見た目
- 共通性状を5つ……可燃性/20℃で液体/発火点は100℃より高い/比重は1より小さい/蒸気比重は1より大きい/電気の不良導体
- 火災予防は3つ……容器は密栓、場所は低所を換気、機器は接地
- 消火は○×表……とくに霧状の水は×、霧状の強化液は○
- 動植物油類の自然発火と給油取扱所の腐食のサイン……それぞれ1問ぶんの価値があります
丙種の性質は、乙4のように何十種類も暗記する科目ではありません。6つを比べるだけです。ただし比べ方を知らないと、入れ替えられた選択肢に気づけません。
合格ドリルには丙種「危険物の性質・火災予防・消火」の練習問題が22問あります。この記事で扱った品目ごとの性状・共通性状・火災予防・消火剤の適否・給油取扱所の実務が、そのまま選択肢の形で出てきます。この科目は6問取れないと不合格なので、まずこの科目を1周して、間違えたところだけ上の表に戻ってください。
法令・燃焼及び消火とあわせて解くなら危険物取扱者 丙種のドリル(62問)から進めます。
編集:合格ドリル運営者|作成と検証の手順は運営者情報に、 誤りを見つけた場合の訂正は訂正履歴で公開しています。
科目ごとに問題を解く
次にやること
危険物取扱者 丙種のページに、ほかの解説記事もまとめています。